第28話 反射てきに

社内の電話が鳴る。

ディスプレイに表示された名前に、エミは思わず手を止めた。


――凌。


反射的に受話器を取る。


「あれ! エミさん? こっちの事務所来たんすね」


「そうそう、久しぶり」


ほんの一瞬だけ、前と同じ空気になる。


でもすぐに、凌は仕事の話へ戻った。

エミもそのまま電話を取り次ぎ、受話器をそっと置く。


静かになった席で、さっきの声だけが耳に残っていた。


――ただの仕事の電話なのに。


エミはキーボードに手を置いたまま、しばらく沈黙した。


頭の中だけが、ほんの少し止まっている。


(もう、本当に遠いんだな……)



(つづく)




* * *


作者:もちごし餡

「社内の電話は、決まった数人が取ることが多いですが、エミは反射的に出ちゃいましたね。」

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