「花より団子。観光より小麦粉。」この一文で檸檬子というキャラクターの全てが伝わります。スナッフルスのタルト、ラッキーピエロのチャイニーズチキンバーガー、六花亭の喫茶室、賞味期限30分のクレープ——食の描写がとにかく具体的で、読んでいるだけで函館行きの検索を始めたくなります。
ただこの作品、グルメ旅行記として読んでいると、ふとした瞬間に違う顔を見せます。函館山の夜景の前で檸檬子がぽつりと感じる「少しの切なさ」、市電の窓越しに既読にして閉じる社内チャット、猫に先導されながら坂道を歩く場面——食べることへの情熱の裏に、日常から少しだけ距離を置きたかった人の気配がある。
「百点じゃなくていい。八十五点の旅だ」という台詞が象徴するように、完璧を求めず、ちゃんと美味しいものを食べて、ちゃんと夜景を見て帰る——それだけで十分だという静かな肯定感が、この作品の芯にあります。肩の力が抜けたい時に読みたい一作です。
この作品、読み始めた時は「函館グルメ旅のほのぼの小説かな?」と思ったのですが、気が付けば完全に檸檬子さんの旅に同行している気分になっていました。まるでオープンワールドゲームのマップをのんびり探索している時みたいに、次はどんなお店や景色や出会いが待っているんだろうとワクワクが止まりません。
特に印象的なのは、料理やスイーツの描写だけではなく、街の空気や港町の匂い、そしてふらりと現れる猫たちまでが旅の風景として自然に息づいているところです。観光ガイドを読むのとは違い、「旅の体温」が伝わってくる感覚がありました。
ひとり旅ならではの自由さと少しの寂しさ、偶然の出会いが重なって、一つひとつの出来事が宝箱イベントみたいに心に残ります。函館が好きな方はもちろん、旅行に行きたいけれど今は行けない方にもおすすめです。読み終える頃には、きっとレモンタルトが食べたくなり、函館の坂道を歩きたくなっていると思います。
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このエッセイ、一粒で二度お得な気がします。
函館グルメ旅行記でありながら、ひとり時間を楽しむ大人の旅物語でもあるから。
主人公檸檬子の食への情熱がとにかく魅力的。スナッフルス、ラッキーピエロ、レモンの花のタルト。どのお店のどの食べ物も実に美味しそう。読んでいるだけで今すぐ函館へ飛び立ちたくなります。
では、ただの食道楽作品なのかと言うと決してそうではなく、函館山の夜景や港町の風景、旅先で出会った人々との交流が丁寧に描かれ、旅特有の高揚感と少しの寂しさが心地よく伝わってきます。
「百点じゃなくていい。八十五点の旅だ」という一節には、肩の力を抜いて人生を楽しむ檸檬子らしさが詰まっているように感じます。これは檸檬子が単なる「食いしん坊キャラ」ではなく、旅慣れていて、自分なりの幸福論を持っているからだと思います。
そして時折現れる猫たち。作者の猫に対する愛もひしひしと感じられます。
函館の観光情報やグルメ情報が自然に物語へ溶け込んでいて、ガイドブックのような押しつけがましさがない部分も素敵です。
旅行好きな人、食べ歩きが好きな人、猫好きな人、みんなに刺さると思います。
物語はこれから、旅先で出会った方との交流につながっていきそうな予感です。読み始めるなら、今かと。
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