ブラッドスポーツである競馬において、当て馬ほど可哀そうな役割はないと思う。
何せ、牝馬の発情の為に使われた挙句、自分は種を遺せないのだから。
どれだけ大切な役割だと頭で分かっていても、僕は彼らにどこか同情してしまう。
スマートトーマスも、前任の試情馬の代わりに当て馬に任命された馬だった。
このトーマス、馬だが、読む限りめちゃくちゃいいやつである。ただやはり、どこか抜けているというか、一流とは程遠い感じもする。
そんな彼は、彼なりに仕事をちゃんとこなし、種牡馬と交代する。それで一件落着のはずだった。
しかし、事件が起こる。牝馬が暴れて、後ろ足で蹴られたトーマスは帰らぬ馬になってしまった。
そして、種付けを終えた牝馬が産んだ仔馬は……なんと当て馬トーマスの子どもだった……!
――結構トンチキな導入ではあるが、読み進めていくうちに、妙に手に汗握る展開になっている。
下世話な話で笑った僕たちは、トーマスの子ども――スマートペガサスに受け継がれた血と、ロマンに胸を熱くさせられている。
こんな与太話みたいな設定なのに、気づけば本気でスマートペガサスを応援している。しかし、競馬の世界には、親がパッとしない競走馬が、歴史に名を残す活躍をすることがある。ミホノブルボン然り、ランニングゲイル然り。
そういったロマンが流れている。これがめちゃくちゃ面白い。
最後まで読んで不快な気持ちにならないのも、きっと作者が競馬、そして競走馬を愛しているからだと思いました。
是非、読んでみてください。