4話目

 先輩の家にきてから特に中身のない話をして、気がつけば11:30にまだなっていた。

 夜が深くなるに比例して先輩の酔いも回ってきたようだった。


「気になりますか?」

「いえ、取る時に痛かったりしないのかなと」

「最初の頃はまぁ痛かったですけど、今は全然ですね」

「そうなんですか…」

「してみます?口は準備なしでやるのお勧めしないですけど」

「えっ、あーちょっと気になるかもです」

「でも校則とかありますよね?」

「いや校則では何も問題ないです、僕もやりたいです。耳ですよね?」

「ふふっ、乗り気ですね。」

「はい、やりましょう」


 僕も先輩を見てて場酔いしてるのだろうか。それとも、僕の体に何かしら先輩の証をつけて欲しいとどこかで思っているのだろうか。


「でもピアッサーとかって今あるんですか?」

「実はあるんですよ」

「何でですか?」

「私の友達がしたいと言うので、ここでやろうとして、でも結局やっぱ辞めると言い出したので、その時のが余ってるんです」

「あーその友達ってどんな人ですか?」

「かなりのお嬢様ですね、親への反抗でピアスをしようとしていたぐらいですから」

「そうですか」


 一瞬先輩の家に別の男も来ていたのではないかと思い、ついつい聞いてしまった。がお嬢様って言うことはきっと女の人なんだろう。

 多分僕はその友人さんに嫉妬していたんだろうか。

 その話を聞いて僕はより一層先輩にピアスをつけて欲しいと願った。




「よし、ここで大丈夫ですか?」

「はい、どこでも大丈夫ですよ」


 先輩はアルコールで僕の耳を消毒し、ペンでとりあえず位置を決めた。


「じゃあいきますね」

「分かりました」


 カッシャ


 思っていたよりも弱々しい音が鳴る。しかし耳元でなったため、ある程度はびっくりした。

 それと耳が痛いよりも熱いと感じる。


「いい感じです」

「そうですか?ありがとうございます」

「はい、これでお揃いですね」


 先輩は少し笑みを浮かべたそう言う。まるで僕がなんて言って欲しいのか全てお見通しのように……


「一応消毒とかを定期的にするようにしてくださいね。あと穴が安定するまでに長時間取ってると穴が塞がっちゃうので、気をつけてください」


 他にも色々とピアスについての注意点を教えてくれた。


「先輩、その口のやつも自分で開けたんですか?」


 今回の僕の耳はセルフで開けた。口も同じように自宅でやったのだろうか……


「あーコレですか?そうですね、今日と同じでここで開けましたよ」

「そうなんですか、家でも開けられるんですね」

「実際は病院に行った方がいいとは思いますけどね」

「痛そうですしね」


 口も家で開けたと言うことに少しびっくりする、舌とか口とかへそとかのピアスは病院でやるものだと思っていた。


「讃岐君次はリップピアスでも開けますか?」

「流石にそれは痛そうなのでまた……」

「ふふっ、やりたくなったら言ってくださいね。おすすめの病院紹介しますし、何ならまた私が穴を開けますよ?」

「はい開けたくなったら……」

「ぜひ待ってますね」

「今は耳で満足しているので」


 本当だ、先輩が僕に明確な何かを残した。

 たったピアス一つで心が満たされたような気がする。


「讃岐君」

「はい?」

「似合ってますよ」


 最後にそう言ってくれた。嬉しかった。




 なんだかんだで気がつけば、時計の針は既に新しい1日を知らせていた。00:50既にそんなにも時間が経っていた。そろそろ帰って寝ないと明日に支障をきたす。


「すいません、先輩。俺そろそろ帰りますね、時間も時間なんで」

「あ、そうですか。送りますね」

「いや、家目の前なんで大丈夫ですよ」

「確かにそうかもですけど補導されるとめんどくさいですし、私はまだ讃岐君といたいので」

「んーでも僕を送っていってくれた後は、先輩1人で帰ることになっちゃいますし……申し訳ないと言いいますか、不安と言いますか……」

「じゃあ、泊まっていきますか?」

「うぇっん」


 ついついよく分からない声を出してしまった。

 いやいや、流石にダメだろう。字面だけで言えば酔った女性の家に泊まる……なんかダメな気がする。


「家も近いですし明日朝一で帰れば荷物持った間に合いますよね?」

「まぁそうですけど、着替えとか風呂とか色々あれじゃないですか?」

「お風呂はウチのをぜひ使ってください、それに着替えは私の高校の頃の体育着でも使ってください。身長的にも入ると思いますよ?歯磨きとかも来客用のがありますし。泊まらない理由が嫌と言う気持ちなら無理は言いませんが、他に現実的な理由なら泊まってください」

「んーでも先輩はいいんですか?一応男を一人暮らしの家に泊まるって……」



 先輩はかなり捲し立ててきた。確かに体育着も入るだろう。僕が171で先輩は160の後半は絶対にある。

 でも流石に警戒心がなさすぎるのではないか…


「私は別に困りませんよ?讃岐君はどうせ手を出してこないでしょうし。でも讃岐君がどうしてもと言うなら……」

「いやいやいやいやいやいや」

「ふふっ、そんなに焦らないでくださいよ結論私は讃岐君を信頼してるということです」


 先輩はかなりえげつないことを言ってきた。きっと酔っているからだろう。そうに決まってる。


「で、泊まりますか?」


「じゃあ、はい……」


 先輩に負けた。いや、欲望に負けた。

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