森の奥の呪われた城には野獣が住んでいた。しかし、恐ろしいと噂される野獣は実際には紅茶と読書を嗜み、静かな日々を過ごしていた。ある日、城に美女が迷い込む。彼女は野獣を見ても怯えず、一晩だけ城に泊めてほしいと言うのだった。
静かで穏やかな空気感の中、徐々に二人の距離が縮まっていくのが素敵な作品でした。
雨の音、風の音、炎の揺らめきに薪の爆ぜる音……静かだけど、様々な音が聞こえてくるのが印象的でした。いつもは聞こえない音が聞こえる、いつもは気にならない音が気になる。他にもナターシャの耳や尻尾、口の端の動きといった些細なところから彼女の心の動き、どんどん打ち解けていく様子がわかるのが良かったです。
みんなから恐怖される野獣の姿のナターシャを見て、その優雅な動きを「魅力的」と評価するアリアーゼ。うまくいかなくても何度も試みるアリアーゼを見て「粘り強い」と評価するナターシャ。お互いにお互いのことをよく見て、目の前にあるものを事実としてそのまま受け止める。余計な詮索はしない。無理しなくて良い、今のままで良いんだよと伝えあう。そんな二人の様子にほっこりしました。
また、読者にはナターシャの心の動きが見えているのに、本人は無自覚であったり、ソフトにツンデレであったりする様子がすごく可愛かったです。がさつな動きを直してみたいけど長続きしない、頑張り屋なアリアーゼも可愛かったです。
段々と明らかになるアリアーゼの事情。その先で彼女たちはどんな答えにたどり着くのか。
二人のドラマや作品の持つ心地よい空気感に身をまかせているうちに、あっという間に読めてしまう6万文字でした!
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森の奥の古城に住む、元お姫様である野獣と、そこに迷い込んだ一人の美女による、異彩を放つファンタジー作品です。
特筆すべきは、緻密で美しい情景描写。純文学を読んでいるかのような静謐な空気感を纏いながらも、文体自体はとても軽やかで、スラスラと読み進められるバランスが見事です。
見た目や役割、性別といった世間の枠組みでは測れない、秘密を抱えた二人。
個人的には、往年の名作への現代的な回答(アンチテーゼ)とも解釈できるように感じました。
彼女たちだけが知る本当の姿と数奇な運命を、夜にしっとりと味わうように読み進めたくなる魅力的な作品です。