「ゲームのせいで世界が敵になった——」そんな絶望を味わったことはありませんか?
本作の主人公・朝陽(あさひ)は、SNSの悪意や大人の欺瞞(ウソ)によって、大好きだったeスポーツゲーム『SOBZ』から理不尽に追い出され、心を閉ざしていました。
しかし、高校最後の春、奇跡的な出会いが彼の運命を動かします。
怪しげなチームオーナー「リコール」にスカウトされ、仲間である天才アナリスト・海斗(リムライト)と共に、かつて自分を打ち負かした最強チーム「イジェクト」へ真っ向から挑むことに。
本作の魅力は、ただの「力押し」ではないところ。
『名探偵コナン』や『ライアーゲーム』のように、徹底的なデータ分析やマップの先読み、相手の戦術の穴を突く頭脳戦で、格上の相手を攻略していくカタルシスが味わえます。スマホの小さな画面に指を走らせ、仲間と呼吸を合わせて勝利を掴み取る姿は、読んでいて最高に熱くなります。
理不尽な環境や過去のトラウマに立ち向かい、自分の「好き」を諦めない姿は、部活や勉強に悩む中高生にこそ刺さるはず。
一度は挫折した少年が、知略と仲間の絆を武器に這い上がる——極上の人間再生ドラマとリベンジの爽快感を、ぜひ体感してみてください!
2019年=今から少しだけ昔。
あの頃何していたか、記憶は人によって千差万別でしょうが、日本人の多くにとってこの点は否定し難いでしょう。
2019年=令和の始まり。
同じ日常のはずなのに、何かが変わるような、新時代の予感が抑えきれない。これはその時代の衝動の中に放り込まれた文化、『eスポーツ』をテーマとしたお話です。
当時はまだまだ新しくて、最近では随分定着した言葉、『eスポーツ』=競技としてのゲーム。主人公のサザンは若輩ながらもスマホ向けFPSの名手。しかし、有名チームのスター選手にチートの冤罪を吹っ掛けられ引退の憂き目に遭います。そんな彼を拾い上げたのは謎のドレッドヘアー男。元プロeスポーツ選手にして、裸一貫で新チームを立ち上げたドレッドヘア-が用意したのはなんとチームリーダーの席。サザンは同じく集められた癖のある仲間達と共に、宿敵も参加する大会に殴り込む!
と言う感じで、メインストーリーは気持ちいいぐらい直球ストレート。ですが、一筋縄じゃいかない。チームメンバーが抱えるそれぞれの事情や関係にサザンが葛藤することもしばしば。その他にもリーダーとして勝つ為の選択を重ねばならないサザンの姿は若いのに立派だなあと感心させられるばかりです。それから、信頼できる大人のようで底の見えないドレッドヘアー、リコールを始めとしたその他のキャラクターの動向も目が離せません。選手のみならず、切り抜きを作る動画編集者やコラボ相手のVtuber等のサブキャラクター達は、試合だけでは完結できない競技全体、まさに『eスポーツ』を語る為に用意されたものであり、その点こそが本作を同題材の諸作品の中で特異なものにしています。
本作の最も魅力的な点は、物語全体で当時の狂騒の中で未だ形の定まらぬ『eスポーツ』なるものを捉え直そうとしているところです。『あの頃』のeスポーツとは何だったのか。作中人物達も正解がわからない中、ただ目前の難問に取り組んでいく。試合では戦略を練りスキルを磨き、SNSではバズる為に動画を作り、感情の赴くまま暴言を吐いて炎上し、チート疑惑を押し付けたり。目の回る忙しさ、目も当てられない愚かしさ、目が眩む輝かしさ。そんな、あの新時代の『盛り上がり』を閉じ込めた稀有の一作です。どうぞお楽しみください!