指輪そのものを語り手にして、背徳の恋を「所有の崩壊」として描いているところがとても印象的でした。
冒頭から、指輪が彼女の薬指に密着し、体温や鼓動を感じている描写が生々しく、ただの装飾品ではなく「楔」として存在していることが伝わってきます。
愛の証というより、誰かに属していることを示す冷たい輪として描かれているのが強烈でした。
その指輪が、彼の手によって無理やり外される場面も迫力があります。
液体石鹸で滑らされ、第二関節を越えて引き抜かれる感覚が、肉の痛みと一緒に伝わってきて、単に指輪を外すだけの行為が、あたかも関係を壊す儀式のように見えました。
そしてラスト。
お読み頂きたいので内容は伏せますが。
美しい恋、では決してないですね。
水槽、プラチナ、肉の温度、苔、濾過器の音。
すべての描写が湿っていて、冷たくて、どこか生々しい。
短い中に、耽美さと不穏さがぎゅっと詰まった作品でした。