八歳の少年が、十万の軍勢を相手に戦術を立てる。
その一点だけで読む手が止まる。しかしこの作品の本当の怖さは、少年が戦場で勝つことではない。勝った後に何をするか、をすでに考えているところにある。
アウグストは天才と呼ばれる種類の人間だが、嫌味がない。驕らず、父王を立て、兵の命を数字として見ない。それでいて盤面全体を、誰よりも遠くまで見ている。読んでいると、この少年の視界に入りたくて、ページを繰る手が速くなる。
戦争が終わり、講和の席に向かうアウグストの目に映るのは、同じ年頃の少女だ。
だが少年は少女を見ていない。女帝を見ている。
どれほど幼くとも、彼らは国の未来を背負っており、子どもであることは許されない立場だった。
その視線の先に、人が生きる「国」がある。