何よりもまず触れたいのは、視点を細かく切り替える構成の使い方の巧みさ。
ルシア視点で見えている範囲とレオン視点・エレナ視点で見えている範囲にずれを作ることで、読んでる者だけが「相手が実は攻略対象だ」「実は大したダメージを受けていない」といった事実を先取りできる。
当事者たちがすれ違ったまま会話している様子そのものが笑いどころになる仕掛けで、単線的な一人称では出せない可笑しみが生まれてる。
次に光るのが、笑いと情緒の振れ幅を自在に操る筆致の幅で、グレートウルフ戦での緊迫した負傷描写から、キスでの治療、そのあとの家族総出のすっとぼけた祝福ムードへと一気に引き戻す落差は相当に大きい。それでも置いていかれる感じがしない。
逆に、別れの場面では同じ筆致がそのまま温度を持って泣かせにくる。このギャップの使い方ができる作品はなかなか無い。