求人票に書いてあったのに、誕生日を祝って貰えないメイドのアイナ。
彼女は余りの扱いに怒りを抱き、退職しようとする。
だが公爵家に起こる数々のトラブルに、彼女のご奉仕心が爆発。
退職届を脇に置き、持ち前の家庭の知識で様々なトラブルを解決に導く。
するとあら不思議、使用人や公爵は彼女のことを聖女だと勘違いしてしまった。
これはとんだいい迷惑だが、果たして彼女は退職出来るのか……。
ズバリこの作品の魅力は、いい意味で勘違いしていることです。
てんやわんやする彼女に、使用人たちは聖女と崇め、公爵は無類の愛を抱きます。
すれ違いが起こってるにせよ、温かな空気で迎えてくれるのです。
そんなホッコリする空気の中で、主人公であるアイナの家庭の知恵が爆発します。
どれもこれも実際に出来るものらしいです。現実でライフハックとして使ってみるのもいいかも?
誕生日を忘れられて辞表を懐に忍ばせるアイナと、不器用すぎるレナード様の攻防が最高に癖になります。人形の修繕、庭師の誕生日会、バラ園の害虫駆除……アイナは辞めるきっかけを掴むたびに、無自覚な家事の腕前で当主の窮地を救ってしまい、そのたびに周囲からは聖女、守護天使と崇められていく構図が絶妙です。
噂話がどんどん尾ひれをつけて聖女伝説に膨れ上がっていく使用人たちの掛け合いも、テンポよく笑えるポイントでした。深刻になりすぎない軽快な語り口と、噛み合わない二人の会話劇に漂うコメディセンスが光ります。次はどんな騒動が二人を待ち受けているのか
第一話だけで、もうアイナさんのことが大好きになってしまいました。
トランクの蓋を全力で踏みつけるところから始まるこの物語、冒頭の一行で既に「あ、この子のこと全部見届けたい」と思わせる引力があります。誕生日を盛大に祝ってくれるという求人票の一文を信じて入職したのに、後輩庭師がシャンパンで祝われるどんちゃん騒ぎを横目に完全スルーされた怒りと悲しさ——そこに共感できない人間がいるでしょうか。
そして退職願を握りしめて乗り込んだ執務室で目にしたのが、亡き母の形見の人形と格闘しながら何度も指を刺し続ける当主の姿。このシーン、「イライラする!そんな角度から刺したら……!」というアイナの内心の叫びから「バッ……若様っ!それ、貸してください!」までの流れが、キャラクターとして完璧です。怒りが一瞬でプロの矜持と優しさに負けてしまう瞬間の描写が、説明なしにちゃんと伝わってくる。
当主レナードも一話目から魅力的です。冷徹な名家の当主かと思いきや、母の形見相手に半泣きで四回も自分の指を刺し、「口止め料でもある」と照れくさそうに笑う。このギャップ、反則です。
「明日こそ絶対に出て行ってやるんだ……からっ……」と眠りにつくラストの一文に、すでに全てが詰まっています。辞めない、絶対に辞めない、この子は。
温かくて、少し騒がしくて、読んでいるだけで元気になれる物語です。続きが楽しみでなりません。