第一話だけで、もうアイナさんのことが大好きになってしまいました。
トランクの蓋を全力で踏みつけるところから始まるこの物語、冒頭の一行で既に「あ、この子のこと全部見届けたい」と思わせる引力があります。誕生日を盛大に祝ってくれるという求人票の一文を信じて入職したのに、後輩庭師がシャンパンで祝われるどんちゃん騒ぎを横目に完全スルーされた怒りと悲しさ——そこに共感できない人間がいるでしょうか。
そして退職願を握りしめて乗り込んだ執務室で目にしたのが、亡き母の形見の人形と格闘しながら何度も指を刺し続ける当主の姿。このシーン、「イライラする!そんな角度から刺したら……!」というアイナの内心の叫びから「バッ……若様っ!それ、貸してください!」までの流れが、キャラクターとして完璧です。怒りが一瞬でプロの矜持と優しさに負けてしまう瞬間の描写が、説明なしにちゃんと伝わってくる。
当主レナードも一話目から魅力的です。冷徹な名家の当主かと思いきや、母の形見相手に半泣きで四回も自分の指を刺し、「口止め料でもある」と照れくさそうに笑う。このギャップ、反則です。
「明日こそ絶対に出て行ってやるんだ……からっ……」と眠りにつくラストの一文に、すでに全てが詰まっています。辞めない、絶対に辞めない、この子は。
温かくて、少し騒がしくて、読んでいるだけで元気になれる物語です。続きが楽しみでなりません。