金魚の視点から、人間の恋の行く末を静かに見つめる構成がとても巧みです。
水槽の中では、音はぼんやりとしか届かない。けれど、透明な壁の向こうには女子高生たちの声があり、金魚はその声や表情を見つめている。冒頭から、水の中にいる感覚が自然に伝わってきて、すっと作品の世界に入れました。
白い砂の中に隠された銀色の輪を、金魚は「宝物」として大切にしている。けれど人間にとってそれは――。
この認識のずれが、とても切なかったです。
特に、「これは、ここに置いておくの」「内緒ね」という台詞が効いていました。
少女が何を抱えてその指輪を沈めたのかは詳しく語られません。だからこそ、少しの嘘と本気の恋が、水槽の底に沈んだまま静かに残っている感じがします。
声を持たない金魚だからこそ、誰にも言わずに秘密を見守り続けられる。
短い中に、透明感と切なさのある余韻が残る作品でした。