『雨の日だけ、あの人は戻ってくる』という投書の文面だけで、切なさと不穏さが入り混じった空気を作り出しているのが印象的でした。足跡という具体的な手がかりから真相に迫っていく過程はミステリーらしい論理性を保ちながらも、「結果を伝えることに逡巡してしまう」という三竹たちの反応が、単純な謎解きでは終わらせない人間的な重みを加えています。
短編1話というコンパクトな分量の中で、調査の過程よりも「真実を知った後どうするか」という部分に重心を置いているように感じられ、シリーズの中でも特に静かな余韻を残す一篇だと思いました。
五月雨という季節感を背景に、戻ってくる「あの人」の正体がどう明かされ、どう受け止められるのか読後にしばらく考えさせられる、シリーズらしい丁寧な短編ミステリーです。