白い砂に半ば沈んだ赤い指輪、これが願いを叶えるという宝物に違いない。地図によって、無事に宝の元まで辿り着けた盗賊のお話。長い時と積み重ねを象徴する白い砂が極めて印象的に作用して、余韻を残す。短いお話でも、奥行きや時の長さを出せるのはとても感心するし、物語とは面白いなあと改めて思えて好き。
宝物が沈むという迷宮の地図…それは、余りにも詳細な地図。 闇市で手に入れたのに。既に宝物は無いかも知れないが、それでも偸盗の越し方は何かを急く。 罠であるのか、或いは。目の前の宝には霞んでゆく警戒心が、完全に殺された時に。硝子で造られた水槽には白い砂が堆く積もり赫い宝石を嵌め込んだ指輪が水の中で煌めく。作者の端正で卒のない筆にかかれば、如何なるモノも不穏に、恐ろしく、そして魅力的に映る。 願いを叶える宝物とは。短いながらも、その背景は広大である。
迷宮を進む盗賊と同じように、慎重に読み進めましょう。一筋縄ではいかないだろうとわかっていつつも、想像の斜め上をいく展開が待っています。読後に、ああすれば良かったかも、こうすれば大丈夫なんじゃないか、なんてことを考えたくなる楽しみもある作品です。
とても詳しい地図のおかげで、盗賊は難なくお宝の前までやってきた。目の前に赤い宝石の指輪。すんなり事が運ぶとは思えない。概ねその予想の通りではあるのだけれど――それでも尚「!」ってなる。荒っぽい言葉遣いの盗賊に対し、状況を綴った描写が恐ろしくて美しい。クリアな映像が頭に浮かんだ。短くて、切れ味鋭いファンタジー。
秘されし古の迷宮。その奥深くにひそむ宝は、願いを叶える力を持つと伝えられる。奥に在るのは、台座の上に硝子の水槽。透き通って見える水。その底に積もり積もった白い砂。それが全て。侵入者の欲深さと愚かさとを、嘲笑うかのように、それは全てをさらけ出し……途方もない悪辣さを秘めていた。透明な悪意の戦慄をえがいた一幕。
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