体調を崩して訪れた調剤薬局で、優しい薬剤師さんに出会う。
始まりはとても小さなきっかけなのに、そこから紅林さんの心が少しずつ神藍木さんへ向かっていく流れが、とても丁寧で可愛らしい作品です。
問診票、おくすり手帳、処方箋、薬の説明。
本来なら日常の中にある医療のやり取りが、この作品では恋のきっかけになっていて、その距離感がとても良かったです。
紅林さんが、神藍木さんの優しい声や綺麗な手、細やかな気遣いに心を奪われていく様子が、本当に初々しくて微笑ましいです。処方箋がないと会いに行きづらい、でも会いたい。体調が悪い時に優しくされたから気になるのか、それとも本当に惹かれているのか。自分の気持ちに戸惑いながらも、どんどん好きが大きくなっていくところに、何度もにやにやしてしまいました。
特に好きなのは、紅林さんの一喜一憂です。
連絡先を交換しただけで舞い上がったり、メッセージひとつで一日中機嫌が良くなったり、逆に少しのことで不安になったり。恋をしている時の心の忙しさが、とても自然に描かれていて、読んでいて応援したくなります。
一方で、神藍木さんもただ優しいだけの人ではなく、相手を放っておけない性格や、ふとした時に見える揺れ、紅林さんに向ける特別な反応が少しずつ見えてくるのが魅力的でした。
薬局での関係、偶然の出会い、食事の約束、メッセージのやり取り。
会うための理由が「処方箋」から、少しずつ「会いたいから」に変わっていく過程が甘くて、とても好きです。
紅林さんの真っ直ぐすぎる好意と、神藍木さんの優しさの奥にある揺れ。
さらに、周囲の視線や小さな誤解も重なって、二人の関係がただ甘いだけでは終わらないところも面白いです。
少しずつ近づいているのに、まだ言葉にはしきれない。
そのもどかしさも含めて、続きがとても楽しみです。
処方箋から始まる恋。
その言葉通り、弱った身体だけでなく、恋に揺れる心まで優しく包んでくれるような物語でした。