「幸せな時に殺して欲しかった」という一文から始まるのに、この作品の空気はずっと静かです。その静けさの中に、じわじわと逃げ場のないものが積み重なっていく。
望んでいた終わりに届いたはずの瞬間が、五文字でひっくり返る。その後の語りが、読み終えてもしばらく残ります。
同じ著者の他の作品と並べて読むと、この語り手が見ていた景色がまた別の色に見えてくる気がします。三作並べて初めて開く底があるかもしれないという感覚がじわりと広がります。
喪失そのものより、その後が続いていくことの重さに触れたい人に届く作品です。