作品紹介を読んだ時、「銭天堂」「笑ゥせぇるすまん」のようなお話なのかな・・・? と思って読み始めました。
描かれるのは、情緒あふれる賑やかな江戸の町。本を愛する茶屋の看板娘。そして・・・謎めいた貸本屋。
五感の描写がふんだんに用いられ、文政五年の手触りが伝わってくるかの様な文体です。それでいて一文一文が読み易く、物語はテンポの良く展開してゆく。それらは全て、作者様の高い筆力の証左に他なりません。
私がこの物語に惹かれた最大の理由は、登場する物語が実在のものだということです。銭天堂のように、魔法の様な品々が超常現象を起こすわけではない。青空文庫で今も読める、江戸の町人文化で生まれた物語たちです。
そんな実在の物語が、読み手によって「毒」にも「薬」にもなる。人情味溢れる物語が、贖罪を希う者が読めば、断罪の物語となる。
本とは、物語とは、こんなにも人間の実存を揺さぶるものなのか。フィクションや魔法は一切登場しないからこそ、深い余韻が残りました。
そんな第一話でしたが、第二話以降が楽しみで仕方ありません。本を触媒として、読者と物語の化学反応が起きるのか? 毒のような物語は薬となるのか。あるいは、その逆か。
次に題材となる貸本は何なのか? も含め、楽しみに待ちたいと思います!