この小説を開く人は、少なからず「本」に縁がある人でしょう。
読書好き、そこまでいかなくとも、日常の中に「本」があることを当たり前に受け止めている人。
絵本でも、漫画でもいい。
ただそこに在るだけの本。
その本が、どれほど心を揺さぶったか。
衝撃を受け、共感し、心が震えて、本を閉じると同時に溜息が出る。
目の前の現実と没入していた世界の膜が破れて
現実にかえる時。
胸に抱いた本は大切な一冊になっている、そんな経験をしたことはないだろうか。
本というもの、そして物語というものが持つ力。
古の昔より残るものであり続ける物語と言う得体の知れない力。
それを丁寧に丁寧に、紐解くような物語が
『大江戸貸本幻燈記』だ。
ただの文字の羅列。日常でも傍にある文字が、
編まれ、ストーリーをなぞり、言葉になり、姿になる。
掌に収まる、大した重さも感じないようなその「本」が
どれほど心を食い破り、
読み終えた瞬間から人生を変えるほどの力を持ったりする。
しかしそれは必ず「人」の手が紡いだもの。
そしてその物語を受け取るのもまた「人」なのだ。
人が生み、人が感じ入って、また人へ継がれていく。
人が生み出したものの中で最も巨大で満ちな力を持つのが「本」なのではないかと漠然と思いました。
また、どんな「本」に出会うかもまた、人それぞれ。
どんな一冊があなたの人生に置かれるのかも、人それぞれ。
あなたの人生にとって大切な一冊が、どんな存在なのか。
もう一度手に取って振り返りたくなる。そんな物語。
本好きのあなたも、そうでない人も。
出会わねば損。傍にある本が途方もなく大切な一冊になるような指南書ここにあり。
物語のための物語、とでも言いましょうか。
ましてや物語を紡ぐあなたならば、より心揺さぶられる物語でありましょう。
宵書堂の影を探しに、江戸の町へ旅に出ましょう。
人生の本棚に据えたい、そう本気で思う物語です。
このお話の魅力はなんと言ってもヒロインのお蜜ちゃんが可愛いことです。ちょっと勝気な性格で、不幸を呼ぶ貸し本屋さんに、突っかかる所が良いですね。強い性格の裏側には、幼い頃にお母さんを亡くした悲しみを抱えている面もあります。またお父さんのお団子屋さんを手伝っている姿も健気で良いなあと思います。
そして、謎めいた貸本屋さん、アニメ化したら石田彰様でお願いします。糸目なんですよ。品があって、ちょっといい着物を着ている所が素敵です。会話は、曖昧な受け答えをして、話し相手の気持ちを揺さぶってきます。輪郭が無いのに芯に来るというか。
このお話、とっても面白いのに★が思ったより少なくて、本当にもう、あと5倍くらいの★の数が無いと変だなと思っています。どなたか、★をつけ忘れていませんか? どんどん★が増えて欲しいです。そんな応援をしたくなるくらい、可愛くて、ぞくりとできる素敵な江戸ミステリーホラー物語です。ぜひ御一読くださいませ。とても読みやすく、詩情あふれる江戸の町並み、世界観に引き込まれますよ。
舞台は江戸。
そしてこの物語の鍵は本です。
おそらくカクヨムを使う方々には、忘れられない一冊というものがあると思います。
それは、価値観を変えたり、救われたり、涙したり、絶望したり。心に大きな跡を残すそんな物語が胸の中にあるでしょう。
貸し本をきっかけとしたファンタジー小説なのですが、この物語を勧めたい点が江戸を舞台にしているところです。
有名な著者。太宰治や夏目漱石、森鴎外や宮沢賢治。それよりも遥か昔の人が書き綴った物語に焦点が当てられています。
もう、息を吸うだけで香りがしそうなほど作り込まれた世界感。名前も知らないような昔々の物語と、その物語に心を揺さぶられる人々。
たまりません。
大好きです。
読んでええええ!!!!
作品紹介を読んだ時、「銭天堂」「笑ゥせぇるすまん」のようなお話なのかな・・・? と思って読み始めました。
描かれるのは、情緒あふれる賑やかな江戸の町。本を愛する茶屋の看板娘。そして・・・謎めいた貸本屋。
五感の描写がふんだんに用いられ、文政五年の手触りが伝わってくるかの様な文体です。それでいて一文一文が読み易く、物語はテンポの良く展開してゆく。それらは全て、作者様の高い筆力の証左に他なりません。
私がこの物語に惹かれた最大の理由は、登場する物語が実在のものだということです。銭天堂のように、魔法の様な品々が超常現象を起こすわけではない。青空文庫で今も読める、江戸の町人文化で生まれた物語たちです。
そんな実在の物語が、読み手によって「毒」にも「薬」にもなる。人情味溢れる物語が、贖罪を希う者が読めば、断罪の物語となる。
本とは、物語とは、こんなにも人間の実存を揺さぶるものなのか。フィクションや魔法は一切登場しないからこそ、深い余韻が残りました。
そんな第一話でしたが、第二話以降が楽しみで仕方ありません。本を触媒として、読者と物語の化学反応が起きるのか? 毒のような物語は薬となるのか。あるいは、その逆か。
次に題材となる貸本は何なのか? も含め、楽しみに待ちたいと思います!