欠けた者同士が見つけた、かけがえのない居場所……。
本作の魅力は、なんといっても葵と稲、二人の関係が少しずつ育まれていく過程の丁寧さにあります。
家族から「欠け」と蔑まれ、自分には価値がないと思い込んで生きてきた葵。
一方で、理不尽な運命によって大切なものを奪われ、孤独を抱えて生きてきた稲。
そんな二人が出会い、食卓を囲み、言葉を交わし、互いを気遣いながら少しずつ心の距離を縮めていく様子が本当に愛おしいです。
派手な展開で惹きつける作品ではありません。
けれど、だからこそ胸に沁みます。
一緒にご飯を食べること。
誰かの帰りを待つこと。
名前を呼ばれること。
必要としてもらえること。
当たり前のようで当たり前ではなかった幸せを、二人が一つずつ積み重ねていく姿に何度も心を温められました。
また、白神村の穏やかな空気感や四季の描写も美しくて、読んでいるだけでその景色が目に浮かびます。
しかし、その優しい日々の裏では、白月家を巡る不穏な思惑や過去の因縁も静かに動き始めており、ただの恋愛物語では終わらない奥行きも感じさせます。
優しい物語が好きな方。
じれったくも尊い恋愛が好きな方。
傷ついた二人が幸せを見つけていく物語を読みたい方。
そんな方に、ぜひ手に取っていただきたい作品です!