1章 白石冬香と夏の始まり
第九話 今日からお嬢様ですわよ!
桜舞い散る...以下同文。
やってきたのは東京最大級の女子校であり、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とエレベータ式の白百合学園だ。
今日から俺はここに最低でも2年間は過ごすことになる。
「桜川真宵さんね、今日からよろしく。私は貴方が入るクラスの担任をしている唐川よ。気軽になんでも相談してね」
「よろしくお願いします」
彼女はメガネをクイッとあげた。俺も軽く挨拶を交わすと、すぐさま自分のクラスへと行くために職員室を後にした。
その道中、唐川先生が聞いてきた。
「桜川さんって、アイドルやるからこっちに転校してきたんだっけ?」
「はい、隠してた方がいいですかね?」
「隠してもいつかはテレビとかに出るから意味はないと思うし、言ってもいいんじゃない?この学校、そういう芸能系も含めてメディア進出してる子多いから大丈夫」
「へ〜、そうなんですね」
「意外?」
「まあ、女子校ってお堅くて殺伐としてたイメージだったので」
「はははっ!入学したての子はそうイメージしてる子は多いかもね」
彼女の反応を見る限り、自分の思っていたイメージとは程遠いのだろうな。
「にしても急で大変だったんじゃない?」
「ええ、ほんとうに急でした」
あの社長を恨んではないが、少し寂しさはある。
天音と椎名は干からびるんじゃないかってぐらいに泣いてたぐらいだ。
「同じグループの子達と同棲してるんでしょ?いや〜進んでるね、最近の子は」
「シェアハウスです!」
「いっしょだよ〜───ところで、キミは女の子が恋愛対象?」
「急になんですか...」
「やっぱり女子校だと、そういう子達は多いからさ、で!どうなの?」
恋愛か、俺には到底理解が出来ん。
前世も惚れさせるために色んな奴らとヤッたが、愛があろうとなかろうと気持ちは良かったが、一回ヤッただけで彼女ヅラ、彼氏ヅラしてくるめんどくさいやつもいたので次第に俺は体を使って、みたいなことはしなくなった。
ふむ、女の子は恋愛対象かどうかか...これは適当に濁しとくか。
「どうなんでしょう、初恋もまだなので」
「なんかアイドルっぽい!」
「アイドルですから」
デビュー前だけど。
盛り上がっていると、クラスへと着くと唐川先生からはここで少し待つように言わたので、大人しするのだが、どうしても気になり聞き耳を立てる。
『今日は転校生がきます』
彼女の声に、教室がざわついた。
別にハードルは上がってないのに謎の緊張感に俺は襲われる。オーディションよりも緊張してきたんだが。
『入っていいですよ』
合図をもらい、ゆっくりと教室へと入る。
「まあ!」「カワイイ!」「後光がさしてますわ!!」「100点!」「やばっ、一目惚れしたかも...」
どうやら意外と好評のようで、ふっと肩の力が抜けていつも通りの自分に戻れた。
「宮城から来ました、桜川真宵です。変な時期の転校になりましたがこれから皆さんと仲良くなれるように頑張ります。みなさんよろしくお願いします!」
朝陽と千夏と考えた、転校生の挨拶をするとクラスはパチパチパチパチ!と拍手で溢れた。
これがアイドルパワーか、凄まじいぜ。アイドルやってて良かった〜〜!まっ!まだデビューしてないんですけど!!
「桜川さんは、あそこの席に座って」
「はーい」
ラッキー窓際だ。
クラスから興味津々の視線の中、自分の席へと座ると隣の空席が目に入る。
今日は休みなのだろうか?
「桜川さん!真宵ちゃんって呼んでもいい?」
「いいよ〜」
「宮城県からきたって言ってましたけど、宮城県民は毎日牛タン食べますの?」
「う〜ん、毎日は食べないかな」
「桜川ちゃん、いい匂い。シャンプーは何使ってるの!」
「えっと、確か...なんだっけ忘れちゃった」
「家族構成は!?」
「お母様にお父様、お兄様にシスターが1人でしてよ」
困った、すごい質問攻めだ。お嬢様方の好奇心は計り知れないな。
その日はずっと、集団にもみくちゃにされいつもの数倍以上に体は疲労に襲われた。
「ただいま〜、って誰もいないか」
俺たちが数日前から住んでいる家へとご帰宅。
中はガラリとしていて、今はおひとり様を堪能する時間だ。
「汗かいてるし、シャワー浴びよ」
なぜ皆がいないのか、それは俺だけが中学生で他4人が高校生だからである。こう考えると余計に自分はリーダーなんて到底向いていないような感じだ。
統率を測る、俺には終始無縁だと思っていたし今までも無縁だと思っている。けれど任されたからにはやり切りたい。
そのためにはどうしたらついてきてくれるのか...
考えがまとまらないが今は汗を流そう、
「いちばん風呂はいっただ...「きゃ!」」
洗面所の扉を開き、思わず立ち止まった。
────なぜならそこには着替え中の彼女、白石冬香がいたから。
「なにみてんの!!」
突如投げられたドライヤーをキャッチすると「何とってんの!」と怒られた。解せぬ。
「早く閉めない、さもないと殺す」
「えー、わたしも入りたいんだけど」
「ハッ!残念ね、貴方はあたしのあとに入りなさい」
「...じゃあ一緒に入ろう?」
「は?」
お風呂場にてお互い向かい合う形で湯船に浸かる、そして2人の気まずい空気が流れる。
そりゃそうだ俺は彼女に嫌われている、明らかに敵視されているのはわかっている。ならなぜ一緒に入っているのか、それはもちろん少しでも距離を詰めるためだ─────だが、問題がある。それは、「どうすれば距離を詰めればいいのか」である。
前世の時はベットの上で詰めていたがお風呂か...お風呂はアフターの時しかなかったし、さてどうしたものか...
「冬香さんは今日学校じゃないの?」
「話しかけるな、殺すわよ」
まずは無難に直近の話をしようとしたが敢えなく撃沈。
「いや〜ここのお風呂広いよね〜」
「聞いてなかった?」
桜川真宵はめげない。
「冬香さんはこの家に慣れた?」
「そろそろ本気で首絞めるわよ」
「まあまあ、ただの世間話じゃん。嫌いでもいいからさ、こういう事ありきたりな話しとかないとネットとかで不仲説〜とか騒がれちゃうよ」
「不仲でいいわよ別に、アナタのことは嫌いだし」
んー!こうもハッキリ『嫌い』と言われると流石の俺も傷つくな〜!
「どうしてわたしのことが嫌いなの?」
「さあ?当ててみたら?」
勝ち誇ったようにドヤ顔で言う彼女に少しばかりカチンときたが、ここはアンガーマネジメントだ...オーケー!やっぱ無理!このガキぶち殺す!
勢いよく手を伸ばすと「ふにっ」となにか柔らかいものに当たった。
「あっ...」
「...本当に殺してあげましょうか」
「いやっ!これはすんません!不可抗力と言いますか...!」
「あたしに欲情してるの?」
「テメェの贅肉なんぞに誰がするか!!...ごふぅ!!」
パチンと、お風呂場に乾いた音がこだました。
「ん〜、よっちゃんとふーちゃん喧嘩でもした?」
「「別に」」
「絶対何かあったよね!?真宵ちゃんほっぺ大丈夫なの!?」
「...へーき、へーき」
その日の晩、俺の頬には大きなもみじが出来ていた。朝陽と千夏にはものすごく心配されたが、大丈夫だと言い聞かせるのには苦労した。
いやあね、俺が悪いんですよ?でもね、喧嘩売ってきたのはあっちな訳でして...でも、柔らかかったです、まる
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