「話さへんから、売れてん」というタイトルを見た瞬間から、もうやられました。営業=喋りまくるもの、という思い込みを軽やかに覆してくれる一冊です。
何より魅力的なのは、この関西弁の語り口そのものです。読んでいるとまるで居酒屋でご本人から直接体験談を聞かせてもらっているような臨場感があり、ノウハウ系の文章にありがちな堅苦しさが一切ありません。「知らんけど」の使い方ひとつとっても、肩の力が抜けていて好感が持てます。
中卒、口下手、職人上がりというバックグラウンドから不動産営業のトップ層に上り詰めていく過程は、単なる成功譚ではなく、ちゃんと挫折や失敗、ストレスによる体調不良まで赤裸々に語られているのが誠実です。特に「鉄骨柱が立ってしまった」エピソードは、読んでいてこちらまでヒヤッとしました。それでも逃げずに何度も通って信頼を取り戻していく姿に、説得力のある人間味を感じます。
「余裕」「行動」「信用」「紹介」という、口先のテクニックではなく態度と姿勢から生まれる営業スタイルの解説は、不動産業に限らずどんな仕事にも応用できそうです。一時間の沈黙合戦のエピソードは、まさに「話さない営業」の真骨頂で、読み物としても痛快でした。
口下手で悩んでいる人にも、テクニックに疲れたベテランにも、肩の力を抜いて読んでほしい一作です。実体験に裏打ちされた言葉には、やっぱり重みがあります。