この作品には派手なアクションはない。一発で理解できるような盛り上がりや、世界の存亡がかかった壮大なクライマックスもない。しかし、だからこそこの作品は何一つ心配することなく落ち着いて見れる安心感がある。そして落ち着いて見ることで、その考え抜かれたSFロジックや人間ドラマ、そして恒星間移民に関わる様々な謎を静かに堪能することができる。色々な人に、ぜひ腰を据えて読んで欲しい作品。
潮汐ロックにより、昼は600度、夜はマイナス150度の地獄と化した惑星「アリア」。その狭間に存在するわずかな生存可能領域(ハビタブルエリア)を、太陽の移動速度と同期して「時速40キロ」で走り続ける古びた列車──。この設定の美しさと、それを裏付ける物理的な計算の正確さに、SF好きとして一瞬で脳髄を撃ち抜かれました。
科学設定が緻密で、世界観が物語を押し出すタイプのSF。にもかかわらず、キャラクターの温度がとにかく優しい。ハードSFが好きな人も、キャラの関係性で読む人も、どちらも満足できる稀有な作品。