異世界ハーレム学園〜帰りたい俺達の異世界ハーレム奮闘記〜

右手親指

第1話

 俺は幸せ者だ。 

 毎日通っている通学路を俺は幼馴染であり恋人でもある高野メイと歩く。どこかまだ恋人であることにお互い不慣れで、長いこと幼馴染をしていた弊害なのかなと思ったが、このぎこちない雰囲気も楽しめるほど俺は最高に幸せだった。

 中学の卒業日、ちゃんと告白してよかったなと、俺は自分自身を毎日のように褒めている。こんな幸せがいつまで続きますようにと、手が触れ合いそうな距離で歩くメイの横顔見ながら俺は漠然と思った。

 メイは俺が見ていることに気づく「ちょっともう、恥ずかしいじゃん」と顔を紅潮させてそっぽを向いた。なんて可愛いんだ俺の彼女は!

 学校に着き、昇降口で靴を履き替えメイと一緒に階段をあがり、そのまま教室まで二人で直行。教室に着くと俺とメイは最後列の隣同士で座った。同じクラスでしかも席まで隣なんて運命だろと思わずにいられない。


「よ!お二人さん。朝から熱いね」


 俺の前の席の男、多田トオルが茶化してきた。なかなかにイケメンだが野球部でもないのに何故か坊主でしかもボコボコのニキビ面だ。唇は常にカサカサで髭の処理も甘いので清潔感がなく女子から割と嫌われているが、俺とは大の仲良しだ。


「悪いね。お前の乾燥肌に気を遣ってやりたいけどな」


 こんな軽口を叩けるくらいには仲良しだ。


「いーや俺のことなんかに気を遣わなくていいんだ。俺はほら、自分で潤せる」


 トオルはそう言って隣クラスから遊びに来ていた女子のグループをいやらしい目付きで見た。釣られるようにして俺もその女子グループを見てしまった。髪を金髪に染めた女の子のスカート丈が短く、もう少し頑張ればパンツが見えそうだった。


「ちょっと!ユー!」


 メイが俺の横腹を小突いた。

 俺は言い訳と謝罪を繰り返した。


「私がいるじゃない」


 俺の言い訳を最後まで聞いたメイは恥ずかしそうに口を尖らせて言った。俺の彼女が可愛すぎて叫びたくなった。

 その瞬間、唐突にそれは起こった。視界は暗転し、床は抜け落下していくような感覚。かと思えば無重力空間に居るような宙吊りにされているような不思議な感覚。

 メイの悲鳴が聞こえた。メイだけじゃない他の人の悲鳴も聞こえる。俺は目が見えない中手探りでメイの腕を捕まえた。


「大丈夫だ!大じ───うわ!」


 頭の中でいきなり声が聞こえた。反響するような不快な声で「幸運」と告げた。何がなんだかさっぱりだったが、俺は邪念を払うように頭を振って、再度メイに「俺がついている!」と声をかけた。

 次の瞬間、背中に痛みが走った。宇宙に放り出されたような不思議な感覚は消え去り、俺は地面に寝転がっていた。苦痛に顔を歪めながらメイがいるか確認した。メイも背中を打ったみたいで痛そうにしていた。

 俺はメイの腕から手を離し立ち上がった。俺の周りにはメイだけじゃなく、トオルもそれから教室にいた総勢二十人くらいの生徒もいた。みんな体の一部分をさすっている。どうやら俺やメイ同様、体の何処かを打ったみたいだ。


「立てるか?」


 俺がメイに手を差し出した瞬間、割れんばかりの歓声が起こった。

 何が起こったのか、俺は軽く恐怖しながら辺りを見回した。目の前には大きな城があって、バルコニーや窓から数多の人が身を乗り出して歓声をあげていた。

 彼らは一体何なのか?教室に居たはずが何故外にいるのか?

 混乱気味の俺は取り敢えずメイの手を取り立ち上がらせた。トオルも腰を押さえながら立ち上がり俺の隣に立った。


「何が起こっているんだ?」


 と、トオルが言った。俺は「さっぱりだ」と返した。

 歓声を上げている人達を奇妙に思いながら見上げていると、城の正面の大きな扉が開きヨレヨレのワイシャツを着た白髪混じりのメガネをかけた男の人と厚手のローブを着た金髪の女の人出てきた。男は俺達に近づいてきて立ち止まった。


「取り敢えずは落ち着く場所で私が説明しよう」


 俺達が混乱しているのを察したように男は言い、大きな城とは逆の方向へ女を従わせて歩き出した。俺達は警戒しついて行かなかった。男は振り返り少し微笑んだ。


「そうか、まぁ警戒するよな。私は佐藤ゴロウ。君達と同じ日本人さ」


 無反応の俺たちをみて佐藤さんは頭をポリポリと掻いた。


「信じられないかもしれないが、君たちは異世界召喚された」


 佐藤さんは言いながら日本刀を鞘から抜くようなポーズをとった。


「これがその証拠さ」


 佐藤さんが右手を前に突き出すとまるで鞘から刀身が姿を現しすように光の剣が腰のあたりで構えていた左手から伸びた。「すげ」と隣のトオルが呟いた。


「疑っているようならもう少し派手な魔法を見せてもいい」


 正直、半信半疑だったが話だけは聞いてみようという気になった。

 俺達は佐藤さんに案内されるがままについて行った。木造建ての建物に佐藤さんは入っていき、俺達も入った。俺達二十人以上が入ってもまだ余裕があるくらい建物内は広かった


「ここは私が顧問をしている部活の部室でね。存分にくつろいでくれ」


 佐藤さんは暖炉の前のソファに腰掛けた。何人かは床に座ったりしたが俺とトオルとメイは立ったままだった。


「それで、召喚ってどういうことですか?」


クラスの委員長である飯田君がメガネの位置を直しながら改まって聞いた。


「申し訳ないけど君達は我が国の召喚士によって召喚されたんだ」

「は?あり得ないんだけど?」


 パンツが見えそうな金髪の女子生徒が言った。


「本当に申し訳ないね。でもこの国の伝統なんだ。私だって三十年前召喚された地球人だ」

「あっそ。で、帰る方法は?」

「一応あるが…聞いても損だと思う」


 佐藤さんの返答にパンツ女子がダンっと強く床を踏みつけ怒りを露わにした。


「いいから言えよ」

「おっと、今の日本の女の子は元気がいいね。まぁ、教えてもいいがその前に一週間程ここで過ごしてみてくれないか?思ったより気にいると思うんだ。もし気に入らなかったらその時、帰る方法を教えてあげよう」

「早く言えって言ってんだよ!」


 パンツ女子は怒鳴った。佐藤さんはポケットからハンカチを取り出し額を拭った。


「すまないがこっちにも事情があるんだ。一週間だけ時間をくれないか?」


 パンツ女子は怒り心頭、腕を捲って佐藤さんに近づいたが、友達のこれまたスカートが短い子が抱きついて引き止めた。


「やめとこうよ。だって…危ないよ」


 お友達は明らかに魔法を怖がってた。パンツ女子は佐藤さんを睨みつけた後、深呼吸をし落ち着きを取り戻した。


「一週間後教えてくれるんだな」

「勿論。悪いね我慢させちゃって。時に君達は頭の中で声を聞いたかい?」


 俺達は顔を見合わせ、代表して飯田君が頷いた。


「おーしおーし。それは良かった。じゃあ君達がこれから暮らす場所に案内しよう。女子は私に男子はこちらの女性ミントさんについて行ってくれ」


 佐藤さんは立ち上がり女子に「ついてきてくれ」と呼びかけ部屋を出た。メイが不安からか俺の手を握った。恋人になって初めての手繋ぎだった。まさかこんな形でなんて…。俺はメイの手を強く握り返した。


「すいません。彼女と一緒の部屋がいいのですが…」


 俺はローブの女の人、ミントさんに聞いた。


「申し訳ありませんがご了承ください。丁重にもてなしますのでご心配は無用です」


 女子生徒が佐藤さんについて行ってズラズラと部屋から出ていく。メイを一人ここに置いていくわけには行かないと思い俺は慌てて手を離した。メイも手を離し、何度も振り返りながら部屋を出で行った。


「さて、わたくし達も参りましょうか」


 俺達はミントさんに付き従って部屋を後にした。

 そういえばあの男の人は特に何も説明しなかったなと、道中俺は考えた。結局俺達が何故召喚されたのか分からずじまいだ。ミントさんはさっきの男の人と違ってなんか聞きづらいし…。まさか、魔王討伐とかに駆り出されるのかな?なんかみたことある異世界アニメだとそんな感じだったし。急な状況に流されるまま一週間滞在することになったが、もっと騒いで抵抗するべきだったのかもしれない。

 そんなこと考えているとミントさんが「皆さんが頭の中で何を聞いたか教えてくれますか?」と尋ねてきた。一人一人答えていき俺も「【幸運】」と答えた。

 それから程なく歩いて、目的の場所と思われる大きな洋館の前に着いた。ミントさんは洋館の扉に手をかけた。


「ここから彼女達が案内してくれます」


 ミントさんは目を細めて笑い、扉を開いた。


「「「「「ようこそお越し下さいました!転移者様ぁ!!!!!」」」」」


 なんと俺達を出迎えたのは色っぽい服を着た女の子達だった。

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