「謝罪代行」という仕事を軸に、人と人との間に残った後悔や未練を描いているのが印象的でした!
草真の「読心型」と薔薇寺の「同化型」という対照的な謝罪スタイルが面白く、二人の掛け合いにも自然と惹かれます。
三角夫妻のエピソードでは、「許すこと」と「もう一度向き合うこと」は別なのだという描き方が心に残りました。
そして、他人の謝罪を届け続ける草真自身には、かつて幼馴染へ言えなかった謝罪が残っている。この設定がとても効いています。
いつか草真が、自分自身の言葉で過去と向き合う瞬間が来るのか、続きを読みたくなりました!
「謝罪代行業者」というユニークな職種名を創造した上で、従事者も依頼人も問題および心理的側面でもリアリティにあふれるのがまず面白いトコロです。
その上で主人公・草間が序盤にて
“最も厄介な常連の依頼人”の心を
見事に解きほぐし導いた解決作の妙には、
「人の昏く重く痛い内面に踏み込むプロであり、
かつ人として“他者に寄り添い、最も納得のいく解答を示す”」
仕事への、および人としての真摯な姿勢が窺え、好感が持てます。
そこまで他者の気持ちに配慮し得るやり手な“謝り屋”であるはずの草間ですが、過去に幼馴染の蘭に思わず吐いたひと言を10年も引きずったまま。
偶然にも再会した蘭は草間を赦しており、彼の気持ちを汲む意志も示し、草間も内心謝りたいのもやまやま。
それでも草間は「俺には許される資格がない」と、決めつけるばかり。
しかし、
草間は本当に悪い人であろうか?
決して生涯、許されてはならぬ者か?
頑なな思いに草間は最後に決着をつけるべく、蘭がたびたび示し続けたチャンスについに応じます。
その先に待っていたのは、暖かい幕切れ。
過去の自らの過ちをあっさり自ら許すようなマネは、もちろん褒められたものではありません。
しかし胸に重く刺さる後悔を抱え長らく生きている、そんな人の心に添えられる小さな花。
言うなればその花が、この作品でありましょう。
AIが当たり前になった未来で生まれた「謝罪代行」という仕事。その設定だけでも興味を引かれますが、この作品の魅力は単なる近未来SFではなく、「人は本当に心から謝ることができるのか」という部分にあると感じました。
主人公が向き合うものは、仕事として処理できる謝罪ではなく、もっと個人的で簡単には割り切れない感情です。
文章は読みやすく、静かな雰囲気の中にも登場人物の葛藤や心の揺れが丁寧に描かれています。何気なく使っている「ごめん」という言葉について、読後に少し考えさせられる作品でした。
派手な展開だけではなく、人の心の奥にある後悔や優しさを描いた物語が好きな方におすすめです。