第23話DAY211〜DAY220
【二百十一日目】
ごきげんよう。
私たちが推進している無限機関『蒸気』に、多額の支援感謝する。
すでに、現場レベルでの実験フェーズまで進行している。
これが完成すれば、我が国の『大量生産』政策に革命をもたらすことは間違いないだろう。
なを、引き続き投資を依頼する。
また、各都市で発生している体調不良の件と、大量生産政策、すなわち工場との因果関係をこちらで調査している。
この件、意外にも根深い問題かもしれない。
問題解決のための研究費、機材費の投資も依頼したい。
そして、各都市への寺子屋の建設の重要性を今一度訴えたい。
国が国として機能する、全てのものの根幹にあるものは教養だ。
経済も、軍事力も、工学も、農業も根幹にあるのは人間の頭脳の訓練である。
そのための教材をこちらで用意しているところである。
君たちにもわかりやすいように書いているつもりなので、読んでくれるとありがたい。
この件の投資も重ねて依頼する。
* * * * *
光様。
どうも。
私への返信もないまま、二日が経とうとしていますがいかがお過ごしでしょうか。
それに戦争はもう終わったんです。商人が稼げる時期はとうに過ぎました。
あと、百日以上洞窟に篭っている人間には、商業の大変さがわからないと思いますが、市場で店を構えるだけが商売じゃございません。商品を取り寄せるのに生産元の都市に伺わないとならないのです。
それを、全都市でやれと、あなたはそうおっしゃるのですか?
経済についてどうお考えなのか、答えを聞く限り私は楽市楽座の件、首を縦には振りませんからね。
*****
【二百十二日目】
光へ。
おう。
そのー楽市楽座の件で、隅扇島が怒ってるのは、ようは運搬のことだよな?
ほら、
各都市の、商品を買い付けて市場まで運ぶ運送業を俺らが引き受けようと思ってんだよ。
それにほら、京浜大志は立地的に、丁度荒神と黒堀の中間にある都市だし、でけえ山に挟まれてるからなのか商人って絶対俺んとこ通るんだよね。
だからまあ、俺が適任だと思うから、俺に任せてくれよ。
それで、まあ馬車で行くことになるんだと思うんだけどさ。
やっぱり、ウチは道がさほら。アレじゃんか。
川の氾濫も多いし小さい火山なんかしょっちゅうだからさ、それとー山も森も多いからさ。
車輪に優しい道路? ってのがほしいんだよな。これ、前に誰かが言ってたけれども、俺からも頼むわ。
それから隅扇島よお。おめえらも大変なのはわかるけれども、俺は光はよくやってると思うぜ?
だって考えてみろよ。なんだかんだ、戦争に二回勝ってるんだぜ?
それで今や、鉄砲を持ってて石射砲を持ってて、ばかでけえ城が立ってて、船まであるんだぜ?
すげえよ俺らの国は。
この国の住民であることに、もっと誇りを持つべきだと俺は思うんだけどな。
* * * * *
光パイセンへ。
ウッス!! 未来の最先端シティ、
ご無沙汰してます!!
ついにウチも、でっけえ寺子屋が完成したっすよ!!
将来的には、中荒隅より頭のいい学園都市を目指すッスんでヨロシクッス!!
* * * * *
隅扇島へ。
……どうも。返信が遅くなってごめん。光です。
もちろん経済の事も考えてました。
それで、いろいろ考えた結果、つまりは、お金を持ってる国が一番強いと思うんだ。
何をするにしても、まずはお金だからね。
だので国中の貨幣を集めます。
そして、市場に人が流れるようにします。
だから虚民区に積極的に売り込もう!!
『芦矢』『
虚民区も増えたでしょ! なるべくここに売るようにしよう!!
そして、向こうが取引に消極的な場合は僕が話をつけます!
これからは、僕もギルドの一員になって、外交面でいろいろと手伝えることは手伝うし、口出しすることもあります。
これを、『重商主義』と呼ぶことにします。
とにかくお金を集めよう!!
*****
【二百十三日目】
光殿。
第二歩兵隊、綾実にございます。
我々は現在、奥様に続き大陸の南西部に向けて進軍をしております。
正直怖いのは、奥様の二面性でして……
今は『探検』で心が安定している状態かもしれませんが、いつ『戦闘狂』の奥様になられるかが心配にございます。
そして、また戦争が始まった時、我々もどうなるかわかりませぬ……。
我々は実地で兵法を学びましたが、それにはやはり、
精度の高い銃、それから、精度の高い石射砲。こちらをお願いいたします。
また、現場での問題提起をさせていただきたいです……
現状、各々の都市にある工場で武具を生産しているからなのか、
正直に申し上げると、鉄の鎧、今後は必要ないかもしれません。
敵の矢の外から攻撃を仕掛けるのが戦闘の主流になりつつあるので、重いだけのように感じます。
行軍が苦だ、と申し上げるものも多数おります。
一番大変なのは、未開の地の川を渡る時です。
兵の中でも「これなら浴衣でいいよねえ?」などと言い合う瞬間もあります。
また、切実な問題もございます。
遠くの味方と素早く連絡を取る手段はないでしょうか?
戦術は時として、味方との連携が生命線になります。
タイミングがずれると、致命傷になる場合も考えうるのです。
遠くの味方と会話をするなどと、軍人らしからぬ夢物語のようですが。
ご検討のほど、よろしくお願い致します。
* * * * *
光様。
私たちは! もっと自由であっていいと思う!!
戦争、嫌だし。
大量生産、大変だし。
宗教も、あの坊主が言っていたことは嘘っぱち!!
みんなもっと、自主性を持つべきだ!
軍事基地と工場ばっかりで、殺風景な世界はもう嫌だ!
私たちは、もっと生き生きとしていて華やかなものを目指したい。
演劇をやっている間、歌を歌う演目があったっていいじゃないか!
セリフがなくて、身体表現を使ったっていいじゃないか!!
周りはみんな、教養だ、軍事力だ、経済だという。
私はそうじゃないと思う!!
その国の大きさの指標は、文化力だ!!
……と思います。
*****
【二百十四日目】
光様に申し上げ奉る。
仙神堀にござる。
我が国、こと軍勢の力においては、他国を圧する勢いこれあり候やもしれませぬ。
されど、恐れながら申し上げ奉るに、自国の軍備が進み候時とは、また他国も同じく軍備を進めおる時にござる。
戦の世において、この理を見落とし候国こそ、不意に足元を掬われ、思わぬ敗北を喫するものと存じ奉る。
されば、敵勢の実情を探り、その力を正しく見定めるための組織――
この編成につきまして、何卒前向きにご高慮賜りたく存じ奉る。
また、これも再三申し上げ候ことにござれども、
今や仙神堀の道場、ならびに士官学校、遠方の町々にとってはあまりに遠く、通い難きものとなりつつござる。
加えて、生まれて初めて鉄砲を手に取る者どもにとっては、
懇切丁寧なる手引き、あるいは説明の書も必要かと愚考仕り候。
何卒、この儀につきましても、ご検討賜りたくお願い申し上げ奉る。
あれこれと申し上げ立て候こと、まこと、かたじけなく存じ奉る。
されど、すべては国を思えばこそにござる。
伏してお願い申し上げ奉る。
* * * * *
よ! こんつは!!
イヤア快活快活だね! 奥方様の『探検』は。
そしてあっちゃこっちゃ探検してみたら、未だ知らなかった植物とか鉱石とかいろいろ見つかっちゃって。
これは大騒ぎでござんすな。
中でも『石炭』ですか。あれを見つけたのはデカかったですなあ。
石が燃えるんだから!!
あっしが思うにですね、多分まだ、こういうのは眠ってると思いますよ? 大陸に。
これをうまいこと利用し、活用するにはどういう分野の学が必要なのでしょうかねえ。
あ、あとそうだ。
あっしんとこの淀桂もね。流行病が起きちゃって。
どうも伏せっちゃってるやつが多いんで困っちゃいますな。
どうしたもんでしょ。一つ、解決してはもらえませんかね。
*****
【二百十五日目】
京国国民へ。
お待たせ…… ……光です。
ついにできました……。
蒸気で動くピストンだ。
これからは……僕ら人間の力に代わって、蒸気が重いものを運んで、動かすんだ。
時代が変わるよ!!
新しい時代が来るんだ。
少ない人数でも重たいものを運べる時代が来るんだ。
聞こえるかい? 蒸気が国を動かす音が……。 光。
* * * * *
ごきげんよう。
中荒隅だ。
『蒸気機関』はお気に召したかな?
その気になれば、鉄の塊だろうがなんだろうが、疲れることなく遠くに運ぶことができる。
君たちの『大量生産』政策を強力に後押しするだろう。
この研究に投資してくれた人間に報いることができるはずだ。
ただし、問題点は残っている。
それは、鉄の性質の問題だ。
知っての通り鉄は、熱に弱い。
それは、蒸気にも決して強くはないという事を意味する。
残念ながら鉄は万能ではないのだ。
そこで我々科学者は、現在鉄に勝る物質を研究中である。
これも、大量生産政策に大いに役立つだろう。
この研究に対する研究費の投資を依頼する。
*****
【二百十六日目】
ヤッホー。
飛騨高雄だぴょん。
すごいすごいすごい!! 蒸気の力すごい!!
作業能率がものすごい!!
あんなに大変な作業が少ない人数で効率的にできるようになった!!
ベルトコンベアサイコー!!
で、工業化は順調なんだけどさあ……
工場が蒸し風呂状態なんだけど……これは仕方がないの?
あと、やっぱり日が暮れると工場じゃあ何もできないのが惜しいよね。
もっとできるのにー!! ってなる。
あーあとね!! やっぱり変なの!!
病人が増えてるの!!
苦しそうでかわいそうだよう。
ねえなんとかしてよー!!
* * * * *
ごきげんよう。
中荒隅だ。
君たちは燃える水をご存知かな?
これは、我々が蒸気機関の研究と実験をする過程で偶然見つけたものだが、
極めて引火性の高い水があるのだよ。
蒸気機関で知ってもらえたものと思っているが、要は動力とはピストンであり、ピストンとはタービンの回転である。
その上で、この燃える水はタービンを回すエネルギー足りえる可能性がある。
この燃える水を利用することにより、我が国の産業革命が起きるのだ。
この燃える水について、莫大な研究費用をかけて調査したい。
ご足労かけるが、この研究に対する投資をお願いしたい。
*****
【二百十七日目】
光様。
隅扇島にございます。
遅くなりましたが、『重商主義』の件、心得ました。
また、これまでの数々のご無礼、……決して謝りは致しませんが、
まあ光様も色々考えていただいているというところまでは、一旦飲み込みます。
ところで、隅扇島では、市場の活性化につながると思い、劇場の建設を完了いたしましたので報告いたします。
演目は、『王権神授説の談』『銀の姫、城壁を貫く』『ウチの引きこもりはマジで話を聞かない』の三作を予定しております。
奮って、ご来場ください。
* * * * *
よ! こんつは!!
淀桂にござんすけれどもね!
いいですねぇ。まさかあっしがコケラを勤めさせていただいた講談、『ウチの引きこもりはマジで話を聞かない』が舞台化するとは!
これは隅扇島に足を運ぼうかと思いますでございますよ。
さてところで、この度ようやく淀桂にも、士官学校が完成いたしました!!
大陸南東部の方も通える距離にございますので、ご活用お願いしますよ!
では! また明朝!!
*****
【二百十八日目】
HIKARUへ。
Mein Liebling
どうやら私たちは、新たな文明と遭遇したようだわ。
彼らの都市は、見たこともないような固い城壁で守られ、そして、鉄砲で武装をしているわ。
これはもしかして、真似をされたのかもしれないわね。
実力は同じでも、わたしたちには神のご加護が、そして貴方がついているわ。
恐れるものなど何もない。
私は、進むわ。
* * * * *
フェルトへ。
待って待って待って待って!!!
そうやってすぐ誰かを見つけたら戦争に話を持ってくのはやめようって!!
何!? 血に飢えてるの!?
技術力が同じなら助け合えるかもじゃんか!!
誰か!! 誰かウチの嫁を止めてー!!
光。
*****
【二百十九日】
Dear Unknown Brothers,
(見知らぬ兄弟たちへ)
We are the Empire of Yusarika.
(私たちは、『ユーサリカ帝国』です)
We are well aware of your presence and know much about who you are.
(貴方たちのことはよく存じております)
To speak candidly, we regard your actions as little different from those of barbaric invaders. Nevertheless, we shall not yield to intimidation or violence.
(蛮族と変わらない侵略者だと思っておりますが、 私たちは暴力には屈しません)
Whoever you may be, our nation possesses formidable military strength and stands fully prepared to defend its sovereignty.
(貴方たちが何者でも、私たちには強力な軍事力が備わっております)
For your own sake, we strongly advise you to reconsider your course and withdraw.
Respectfully,
(引き返した方が貴方のためですよ)
The Empire of Yusarika
(ユーサリカ帝国)
* * * * *
光っちへ。
ヤッホー。飛騨高雄だよん。
蒸気すごいけど! 部屋が暑い! 煙たい!!
みんな汗だくだよ!!
あとさあ、うちはほら、工場しかないような土地じゃん。
そうなるとさーやっぱり、色々な都市から工場に働きにウチに来るんだよね。
多分他の工場持ってる都市も同じだと思うけどさあ、とても住宅が足りないの!!
飛騨高雄こないだまで全然人がいない場所だったんだよ!
小さい家にまとまって住んでもらってるけど、ちょっと環境悪いかなー。
相変わらず病気が流行ってるし……。
ねえなんとかしてーお願いー!!
*****
【二百二十日目】
京国国民へ。
……あ、どうも光です。
……嫁から連絡こないのだけれど!?
……大丈夫なんだよね?!
心配だ……。
あ、そうだ。仙神堀くんからずっと言われてたことだけれども、
敵の内情を合法的に知る方法を思いつきました。
ええ……つまりこれはね、もう戦争はやめようっていうことなんだよね。
その名も『外交官』です。
これで相手国が何を考えていて、何が必要なのかをお互い理解する。
そういう、国と国の窓口役だと思ってほしい。
戦うための組織じゃない。
もう、僕らは戦争なんかしなくても十分育っていけるんだ。
無理して、大陸を統一しなくたっていいじゃないか。
ね。いいでしょ。外交官。
戦い合う時代は終わったの。支え合おう!
この仕組みが、僕らの新しい未来を切り開くと信じて。光。
* * * * *
HIKARUへ。
Mein Liebling
先ほど、我が隊が敵と交戦を開始したわ。
もちろん、一発目は私よ。
私は戦争も恋愛も先手必勝なの。
つまりこれから京国は三度目の戦争状態に突入したと言ってもいいわ。
待っていて。貴方に新しい富を授けるわ。
愛と勝利を。 Ferd
* * * * *
荒神より。
光殿の秘書を務めているものであります。
たった今、光殿が泡を吹いて気絶いたしました!
何やら余程ショックなことがあったのやもしれません!
しばらくみなさまと会話できないかもしれませんが今は安静にさせてあげてください!!
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