第4話DAY21〜DAY30


【二十一日目】


 HIKARUへ。

 

 少し急ぎ過ぎて無理が祟ったみたいね。

 男の一人が倒れたわ。

 このままだと蛮族との戦いどころではないから、一度ここを拠点とするわ。

 男のくせに頼りないわ。


 たかが二十日歩いただけなのに。

 あなたの方はうまくやっているかしら。

 愛を込めて。 Ferd



* * * * *


 フェルトへ。


 ここのところ雨が降ってるから、川が氾濫するかもしれない!

 だから気をつけてほしい!


 住民にも天気の事をよく聞かれているけれど、月の色がわからないからなんとも言えないと答えたよ。

 

 そうだねえ、悪天候で羊も増えないし、蛮族が襲いかかってくるかもしれないというので、住民はちょっと殺伐としているかな。

 ただ、一つニュースがあるよ。


 結構前に話したろ?

 君の見つけた『隅扇島すみおうぎしま』に越したいと言っていた人たちが今日、旅立ったよ。

 雨がここのところ降っているから、川に近づくときは気をつけるように伝えてある。

 

 川が、『隅扇島すみおうぎしま』に行くみんなを守るために、代表の人間に黒曜石を渡したよ。


 そして、今日新たに十名、ここを旅立ちたいと言ってきた人間が現れたから、色々と準備をさせているところだよ。

 そうだね。みんなの安息の地は、みんなで探さないとね。


 とにかく今は、安定した食事を取れる環境が欲しいみたい。

 正直、蛮族どころの騒ぎじゃないよ。


 

*****


【二十二日目】


 

 HIKARUへ。

 

 あなたの忠告を受けて大正解だったわ。

 川沿いを歩いていたら今頃危なかった。

 

 あの川、まるで怒った巨人の咆哮のようね。

 とりあえず今は、拠点を変えて雨を凌いでいるわ。

 

荒神あらかみ』は大丈夫なの? 


 Ferd




* * * * *


 フェルトへ。


 うん、全然大丈夫じゃない。

 川沿いの家は倒壊して、みんなまた洞窟に避難してきたよ。

 

 羊の柵も、あれはやられたなあ。

 全く、僕たちが何をしたっていうんだ。酷すぎるじゃないか。

 

 住民たちももう、ただただ呆然としているよ。

 そんな中でも、『隅扇島』に十人出て行ったからなのか、何人か降りてきたよ。

 今度は、五人。

 つまり全体の数は今、十五人なのかな。

 これは環境が悪化したから……ということなのかもね。


 とにかく川が荒ぶっているうちは、何もできない。ただこうやって、洞窟で身を寄せてしゃがんでいる以外ない。


 食べ物もないからお腹も空くよ。


 あの羊……逃げたかなあ。

 いや、逃げたなら逃げたでいいんだ。もう、手に入らない希望をちらつかされることもないわけだしね。

 羊に執着している場合じゃない。新しい食べ物を探さないと。 

 だから現状、僕らは今蛮族どころじゃありません。


 でも君が無事でよかったよ。 光。



*****



【二十三日目】


 フェルトへ。


 悔しいけれど、羊は逃げてしまったようだ。

 まあ、また捕まえればいいし、次は上手く増やす方法を考えるよ。切り替えていかないと。

 晴れたけど、川の流れが強い。

『隅扇島』の連中が心配だ。たどり着けるだろうか。


 それと、今日はすごい発見があったんだ!

 焚き火の下にあった石を誰かが触って、暑くて火傷を負ったんだよ。

 その男は思わず、水たまりに石を投げ込んだら、白いモヤが出たんだ。

 それを触ってみたら、水がとても暑くなったんだ! って言ってた。

 これを利用できないかな!

 木や石で、水を汲む。そこに熱した石を入れたら、虫や木や草を灰にせずに調理できるんじゃないかな!!


 今日早速試してみる!!



 * * * * *


 

 HIKARUへ。

 

 負傷した男が回復したから、改めて進むことにしたわ。

 

 虫? 木の根? 私たちは目に入る食べられそうなものを食べていたわ。

 羊を見つけたら、今晩の食事は羊だわ。

 ……私たちの方がいい生活をしてるんじゃない?

 

 貴方達が美味しいご飯が食べられることを祈って。 Ferd



*****



【二十四日目】



 HIKARUへ。


 今、蛮族に殺された同胞達にわ。

 遺体の状態がひどかったので、燃やして、

 骨は小さく砕いて川に流したわ。


 彼女達が行きたかった場所に、たどり着けるように。


 許せないわ。本当に。

 男達は怯んでいるけれど、私とネーネは闘志に沸いているわ。


 Ferd


* * * * *


 フェルトへ。

 

 もうそこまできたのか。

 蛮族は近くにいるかもしれない。本当に、本当に気をつけて。

 確かに君は強いけれど、どうか無事に帰ってきて。


 それでいい報告! 尖った石で、太い棒を削って水を溜めたんだ。そこにこの間話した、熱した石を入れたら、本当に水が熱くなって!

 そこに固い虫を入れたら、食べられるようになったんだよ! 虫と木の根と草が!

 これには住民も大喜びさ!

 

 とはいえ、やっぱり一番は羊の肉だよなあ。

 あれを知ってしまったら、もうそれ以外考えられないよ。


 それに、植物だって安定して手に入れるようにしないとならないんだ。

 このまま肉も草も手に入らないとなったら、悲惨だからね。


 今度は安定して植物を手に入れる方法を調べないとだよ……全く。光。



*****


【二十五日目】


 光様。

『隅扇島』の全員、無事到着いたしました事をご報告いたします。


 言われた通り、地面に教えられた『隅扇島』と書いたら、いくつかの『屋根』が現れました。


 それと、早速問題なのですが、食料の取り方を教えてください。

 なにぶん、長旅をいたしましたので、あまり固いものは体が受け付けないみたいです。

 それと、これはおそらく奥様のご報告にあったという『虚民きょみん』の方々だと思うのですが、早速出会いまして。

 攻撃はされませんでしたが、戸惑っている様子が見えましたもので。


 彼らとどう接したものか、『隅扇島』の住民一同戸悩んでおります。


* * * * *


 隅扇島へ。


 引っ越しおめでとう。新生活だね。

 見たと思うけどそこの川は氾濫するから気をつけて。


 食べ物について、今から僕がいうことをよく聞いてほしい。

 

 ・まず、火を起こして、石を加熱する。

 ・大きめの切り株、もしくは木の棒を、石で削って、凹を作る。

 ・水を溜め、食材を入れ、熱した石で水を加熱する。

  

 これで大体のものは食べられるはずだ。

 我々はこの行為を『煮る』と呼ぶことにするよ。

 今ではこっちは、釣った魚を煮て食べてるんだけれど、これはなかなかいけるよ!

 頑張って!


 それと……そうだねえ……虚民とはどうしたものか……

 なんとか、協力して生活できたりしないだろうか?

 一緒に蛮族と戦うとかね……。

 ちょっと考える必要があるね。光。



* * * * *


 

 HIKARUへ。


 ついに見つけたわ。

 私たちの子を酷い目に合わせた奴らを見つけたわ。


 私たちの士気は高く、私の号令一つで突撃するわ。


 彼女達が味わった恐怖の、数十倍恐ろしい目に遭わせるわ。


 „Heute erleben unsere Feinde den schlimmsten Tag ihres Lebens(今日が敵にとって、人生で最悪の日よ)“ 


 Ferd





*****



【二十六日目】


 フェルトへ。

 え! 蛮族の巣を見つけたってこと!? 大丈夫なの!? 返信をちょうだいよ!?


 洞窟の奥に置いてある、絵の束を見てわかったんだけれども、草は水と日光で育つようだ。

 現状、身近にある水は雨水か、目の前を流れる川の水。

 だったら、川の水を引いて、上手く植物を育てられないだろうか。

 

 それと住民の不安は高まっている。


 蛮族もそうだけれど、次いつ「災害」が起きるのか知りたがっているよ。

 それで思ったんだけれど、一体誰が、火山を噴火させたり、川を氾濫させたり、雨を降らせたり、木の実を実らせたりしているんだろう?

 知っている人がいるなら聞いてみたいよ本当に……。


 君が無事であることを祈って。 光。



* * * * *


 光様。

 隅扇島です。


 光様に言われた通りの方法で、なんとか食い繋いでいますが、

住民の不満は解消しきれず、快適な生活とは呼べません。

 この世には、安息の地はないのでしょうか?

 

 それと、今日は初めて『虚民』と接触いたしました。

 彼らに交戦の意思はないようですが、我々を怖がっているそうでして。しかしいかんせん言葉が通じないものですから。

 彼らをどうすればいいか、何か良い知恵をいただけたらと思います。

 隅扇島



* * * * *


 

 HIKARUへ。


 あいつら大したことなかったわ。

 ネーネも、実に勇敢に戦ってくれた。今では常に私のそばに置いているわ。

 蛮族どもが野営地にしていた場所を見つけたから、火をつけて破壊しておいたわよ。


 こちらは無事よ。男達の数名怪我をしたけれど。問題はないわ。


 貴方が考えた武器が有効だったわよ。やはり貴方は天才だわ。


 この地までやってきた、荒神の子の魂に慰みを。

 

 Ferd



*****


【二十七日目】


 フェルトへ。

 

 本当に!? いや、さすがだ。お見事。

 君は強いと知っていたけれど、なるほど! 強いね!!


『同胞』の子達の無念も、これで晴れてくれるといいが。


 こっちは、さっき僕が設計した『田』を作ってみたよ。

 これでなんとか植物が上手く育ってくれたらいいなって考えてるけど、上手くいくといいな。

 考えてみたら、羊達は『草』を食べているから、草が育てば羊だって育てられ…… ……だめだ。羊の事を考えすぎるのはよそう。


 ここ『荒神』もそうだけれど。『隅扇島』も今、信じれるものを必要としているんだと思う。

 そしてそれは、僕にはとても成れない、強い力を持った何かだ。君みたいな。


 ……本当に、帰ってきてくれないか? 光。



* * * * *


 隅扇島へ。

 

 虚民と上手く対話する方法を考えてみてくれないか?

 喧嘩をするよりかは、お互いが共存できる環境を作ることが重要だ。


 例えば、蛮族が出た際は協力してやっつける。(蛮族の巣があったのは、隅扇島から近いからね)


 それと何より、物々交換だ。

 彼らが持っている、食べ物、道具を、僕らが持ってる何かと交換できないか挑戦してみてほしい。

 上手くいくことを信じている。 光。



* * * * *



 HIKARUへ。  

 

 男達を少しだけ休ませたら、一度荒神に帰ろうと思うの。

 そしたら、今度こそ川を登っていくの。

 きっと新しい何かが見つかるはずだわ。


 私は、まだみぬ景色に飢えているんだわ。


 貴方にも幸せが訪れますように。愛を込めて。Ferd




*****



【二十八日目】


 光様へ。

 隅扇島です。

 虚民に対し物々交換できるかとのことで、言葉が通じないのがなかなか厳しいですが、やれるだけやってみます。

 

 そもそも、お互いがお互いを全くわかっていない状態なのですが、確かに今は敵を作っている場合ではございませんからな。

 彼らのことがわかったら、また連絡いたします。


 それと、食料が手に入りづらく、住民の心は不安に苛まれています。

 これでは荒神にいた時と生活が変わらないと言うものも現れる始末でして。

 何か、住民の不安を和らげる手はありませんでしょうか。良い知恵を貸してください。


* * * * *



 HIKARUへ。  


 今、荒神に向かって進んでいるわ。

 凱旋というやつね。

 荒神に戻ったら、しばらくは滞在するわ。


 でも、貴方は私の性格を知っているでしょう?

 一つの場所に収まるのは、柄じゃないのよ。

 私は根無草でいい。風の向くまま、遠くへ飛ばされたいわ。

 だから、貴方の言う、絶対的な力を持った何かには成れないと思うのごめんなさい。


 貴方の不安も、この川が流してくれることを祈っているわ。 Ferd




*****


【二十九日目】


 フェルトへ。

 田んぼの方は、あまり上手くいってないな。

 なんだろう。やり方は間違ってないはずなんだけれど。

 食べられる草を飢えて、溝を掘り、そこに川の水を流す。

 うーん何が足りないんだろう。


 僕はここ一ヶ月のことで悟ったよ。

 人間は、基本的に自分の人生の責任を誰かに押し付けたいんだな。

 だから自分で考える事をしないで、人に聞いて、間違っていたら相手を責める。

『誰かのせいにする』

 言い方が悪いけど、これで人間は前に進めるのかもしれないね。光。



* * * * *


 光様


 隅扇島です。

 伝わらないなりに、なんとか交流しようと努めています。

 今日は彼らの集落に案内されました。


 それで、新たな発見をしたので報告いたします。

 彼ら、捕まえた羊に草を与えて育ててるんです!


 そうすることによって、羊の増え方が良くなるのではないでしょうか?

 


 

*****



【三十日目】


 光様。


 隅扇島です。


 なんとか彼らと交流する術を手に入れたと思います。

 友好な関係を気付けるかもしれません。

 食糧や道具の交換、資材の交換、できることは多いかもしれません。


 やれるだけやってみます。お待ちください。




* * * * *


 隅扇島へ。


 うん! 上出来だ!

 そうかやっぱり羊は捕まえるだけじゃダメなのか。

 ありがとう! 引き続き、彼らとはいい関係を続けてほしい。

 

 やっぱり、味方は欲しいからね。

 ここ数日で一番いい知らせかもしれない。

 すまんが一つ頼むよ。 

 それから、今日は月が赤く、風が強い。

 凶兆が出ている。充分気をつけてくれ。光。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る