「スレイブメタル メタルイントーキョー」

武田正憲

ファイル1-1

 パシャッ!

 綺麗な音とともに、水溜りから水が跳ねる。

「バカヤロウ! レーダーに引っかかるだろう!」

 前を走っていた男が、水溜りに足を突っ込んだ男に怒鳴りつけた。

 前方の男は髭面で、線の太い身体をしている。努鳴りつけられた男は、男と言うにはまだ早く、線も細くひょろっとした……少年だった。

 彼等二人は今、迫り来る何かから、もう使われなくなった地下鉄の線路上を必死に駆けていた。少しでも遠くに行こうと……。

 二人の出で立ちは、とても逃げる者のしているものではなかった。右手には、アサルトレーザーライフル、頭部には、そのライフルからつながったコネクトコードが、片目だけのサーチスコープにつながっている。また、肩にはセラミック製のアーマー。臑、胸にも同じ物が付いていている。

 これだけの装備をした者が恐れるものとは、一体どんな出で立ちなのか?

 おそらく彼等二人には、とても恐ろしく見えた筈であろう。現にこうして、必死で逃げているのだから……。

「ちょっと、待って……ハァ、アアァ……」

 突如、後ろを走っていた少年が、息を切らしながら立ち止まった。膝に手をやり、肩で息をしている。

「何やってんだよ! 速く逃げないと殺されちまうぞ」前を走っていた髭面が気付いて走り寄ってくる。「大丈夫だよ、多分。もう振り切っただろう……」と、少年は顔を上げながら言う。

 しかし、その少年の考えが間違っていた事に、髭面の男は、すでに気付いていた。

 ドサッ

「え?」

 突然の出来事であった。

 今、喋っていた髭面は、何の抵抗も無く、立ち止まった青年の前に倒れ伏せたのである。

「おい! おっさん! おいってばぁ!」少年は、慌てて倒れた男を抱き抱えると、頬を叩いたり身体をゆすったりして、何とか奇跡を起こそうとしていた。だが直ぐに、その男が倒れた理由を理解することになる。

 カチッ

 少年の頭には、黒く光るバレルが押し付けられていたからだ。

「警察だ。貴様をテロ容疑で逮捕する」 

 そのバレルの持ち主は、少年に向かって、そう「警告」する。

「フンッ、警察だぁ、ただの人殺しだろうがぁ、あぁ」少年は精一杯凄んで見せた。

しかし――

 プシュッ

 ボン

 バレルから発射されたブリットは、小口径にもかかわらず、少年の頭を吹き飛ばした。

 銃にはサプレッサーが付いていたが、リボルバーの為、幾らかの火薬は散る。シリンダーの横から漏れた火花に照らし出された“警察”の姿は、先程のテロ容疑を掛けられた少年よりも凶悪に映し出された。


   西暦二一一二年 トーキョー

   アンダータウン 旧東京都庁跡

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