「ねえパトラッシュ……『ロキの花弁』を読んだんだ……」
「ワン……?」
「ぼく、最初は北欧神話の話だと思ってたんだ……。
ロキとか花弁とか、なんだか幻想的じゃないか……」
「クゥン……」
「でも違ったんだ……。
これは、“金”の話だったんだよ……」
「ワ……ワン?」
「経済犯罪と言えば市場操作、企業買収、情報戦……。
誰が得をして、誰が切り捨てられるのか。
その駆け引きが、ものすごく生々しいんだ……」
「クゥゥ……」
「しかも怖いのはね、パトラッシュ……。みんな悪い顔をしてるんだ……」
「ワフ……」
「だから読んでると、誰が怪物なのか分からなくなる……。
いや、もしかしたら“経済”そのものが怪物なのかもしれない……」
「クゥン……」
「でもね、ただ難しいだけじゃないんだ……。
人間の欲とか、焦りとか、プライドとか……そういう感情がちゃんと見えるんだよ……」
「ワン!」
「数字や契約書の向こうで、人間が必死に戦ってる……。
だから熱いんだ……」
「……」
「ねえパトラッシュ……。
ぼく、少し怖くなったよ……。
世の中って、ぼくらの知らないところで、こんな風に動いているのかなって……」
「…………ワン」