何か凄い、一個の文学作品を読んだ感じがしました。
主人公の「私」は男の体に女の心を持った自分をどうにかしようと、「もともとの自分」を殺したことにし、それとは違う設定の「別の自分」に成り代わることで生きてきた。
そしてまた不都合が出ると殺し、どんどん別の人間に成り代わったとすることで、「自分」という存在を保ち続けてきた。
この「アイデンティティの問題の極限」に立たされ、必死に自分を保とうと「設定」を作り続ける感覚。ものすごい固有な「自己」の描写が秀逸で、作品から沸き立つ熱量に圧倒されます。
この「殺す」という概念によって必死に自己を繋ぐ。とある作品の主人公のように「教えてくれ●●、俺たちは、あと何人殺せばいい?(あの子とあの子犬も)」と問いたくなる状態です。
そしてそうやって「死体のない殺人」を繰り返した先に出現する「あるエステサロンの女」。彼女の存在を見たことで噴出する事実。
とにかく読んでみて欲しい、と強くオススメしたい一作です。まさに強烈なリビドーとコンフリクトに満ちた「自意識」に溢れた文学作品。圧巻でした。