爆撃により廃墟と化した灰色の街に降り立つ
施羅。それは見る者によって少年とも少女とも
認識される美しき 異形 のもの。
完璧な左右対称の美しい白磁の顔の白銀の
髪を持つ。首から下は包帯と銀の鎖で拘束され
瓦礫の山に立つ。
少女と、そして語り手の少年は 施羅 に
魅せられて、その住まいでもある白亜の
スウェーデン館に通い始める。
世界の設計図として、そこに在る。熾天使の
名を持つ
施羅 とは一体何者だったのか。
バルザックやスウェーデンボリを下敷きに
書かれたのだというこの作品は、その知識も
さる事ながら、静謐さと硬質な美しさに
彩られつつ、登場人物たちの持つ 虚無 を
昇華させる過程への息を呑む様な感動が
大きなウエイトを占めるだろう。
たった五人の登場人物が見事に 世界 を
構築し、雲間から差し込む荘厳な光の中で
何某かの啓示を得る様を、確かに観る。
静かに流れる時間の緩急、そして
硬質な白磁のスウェーデン館、小高い瓦礫の
上から見下ろした銃後の街。
これは福音であるのかも知れない。
קדוש, קדוש, קדוש ה' צבאות; כבודו מלא כל הארץ.