主人公・瀬野は、これまで何度も自殺を試みては土壇場で踏みとどまってきた青年。屋上でまた「最後の一歩」を踏み出せずにいたところに現れたのが、同じように死のうとしていたクラスメイト・橘凛でした。「卒業式が終わったら二人で心中しよう」という彼女の一言から始まる、二人だけの秘密の関係を描く物語です。
読んでいて印象的だったのは、「心中」という重いテーマを共有したことで二人の距離が急速に縮まっていく過程です。橘の生い立ちが明かされるくだりでは、彼女がなぜ「死」しか自分の意思で選べないと感じているのかが伝わってきて、単なる恋愛的な接近ではなく、互いの「生きづらさ」を認め合うことで初めて心を開けるという歪んだ、でも切実な絆のあり方が丁寧に描かれていると感じました。
文章面ではまだこなれていない箇所も見受けられますが、それを補って余りある「二人の関係がこの先どこに向かうのか」を気にさせる筆力があります。救いなのか、破滅なのか——結末が見えないまま読ませる力が、この作品の一番の魅力だと思います。
デリケートなテーマを扱った作品なので、読む際は心の状態に留意しつつ読んでほしい一作です。