短い物語なのに、読み終えたあとしばらく、夕暮れ色の光の中に引き留められているような感覚が残ります。
不思議な路地裏の小さな店で、幼い女の子と猫店主のあいだに交わされる、ちょっとした約束。
それだけと言えばそれだけなのですが、物語を読み進めるうちに、最初に置かれた何気ない言葉やイメージが、じわじわと別の重みを帯びてきます。
派手な展開よりも、積み重ねていくものの手触りが好きな人には、特に染み入るのではないかと思います。
印象に残ったのは、終盤のある一言です。
それまでの読者の見方を、ひっくり返すわけでも、大声で説明するわけでもなく、ただ短く置かれているだけ——なのに、そこに来るまでのすべてが少し違って見えてくる瞬間がありました。
語りすぎないことの強さを感じました。
余韻のある物語が好きな人、静かなファンタジーで少しだけ胸をあたためたい人に、ぜひ読んでほしい作品です。