第8話 スイッチバック作戦

ー2125年10月3日(水) 11:00ー

 琴音の運転する3400系は、銃撃戦を繰り広げながら丸ノ内線上を進む。

「もうすぐ青山一丁目駅だよ!一旦撃つのやめよう!」丸ノ内線の最高速度、75km/h(ATSは壊れているが、脱線したくないのでこの速度)から一気に減速し、停車すると、列車番号設定機のホログラムに選択肢が表示された。E231系も流石に突撃して来ず後ろで止まっている様だ。殺気を感じる。「半蔵門線(渋谷方面)」を選択すると、列車が勝手に後退し始めた。

「勝手に動いてるのが正常だぞ。連携しておいたからな。」琴音が慌てて聞く前に川瀬が言った。

 3400系は緩やかなカーブをゆっくりとバックして進んだ。半蔵門線の線路に移ると、琴音は一気に3400系を加速させた。車輪が空回りした様な気がした。E231系はまだ見えない。

「次は表参道駅でスイッチバックするんだ。それからしばらく行って、代々木上原駅で小田急線に移ればいい。」1分ほどで着いた表参道駅で、「千代田線(代々木上原方面)」へとスイッチバックした。

「流石にもう追ってこれまい!」琴音の言う通り、E231系は追ってこない。このまま小田原まで行けそうだ。トンネルのライトに照らされながら、琴音たちは進んだ。

「待て・・・何か後ろにいないか?」川瀬が顔を窓の外に突き出しながら言った。琴音も見てみたが、確かに遠くに2つのライトが見えた。まさかE231系なのか?千代田線の最高速度、80km/hで3400系は進む。


 表参道駅を出てから少しした時。左には、ウグイス色のラインがはっきり見えるE231系がぴったりつけている。

「そういえば、私たち逆走してんね。どこで分岐を間違えたか・・・」鉄道は、左側通行である。

「そんな冷静になれる川瀬さんが怖いよ。」他愛無い会話(している暇は無さそう)をしていると、地上区間に入った。視界が良くなると同時に、E231系から銃弾が飛んできた。

「また撃ってきてるよ!しつこいなあ。」琴音は慌てる代わりに呆れ始めた。

「これ、代々木上原でスイッチバックしてみるか・・・?確か繋がってたはず」

「はい?」

「代々木上原で、小田急線にスイッチバックして移って、そのまま後退を続けて新宿方面に逃げるんだ。あっちはそのまま突き進んで行くだろうし、左側にいるから小田急線には行けんだろ。(小田急線と隣接しているのは右側の線路である)」逆走のおかげでできる作戦を川瀬は立てた。

「なるほど・・・やってみますか。」小さな作戦会議をする内に、銃声が止んでいることに気付いた。

「あれ?E231系は?」琴音がふと左を見ると、E231系が居なかった。

「なんか後ろで止まってらー。何で諦めんだ?あそこで。代々木上原着くし、新宿戻る?」川瀬はおっさんからギャルみたいになっていた。

「まあ、せっかく思いついた事だし、スイッチバックして帰りますかね。」

 3400系は代々木上原駅のホームを思いっきりオーバーランして停車した。そして、小田急小田原線の線路へと後退して行った。

「何がしたかったんだろうなー。」川瀬は何か気に食わない様だ。

「何かしら理由があったんだろ。」小春だ。

「お姉ちゃん、ずっと無言だったね。」

「現場の判断の方が的確だろ。」

「無事に・・・まあガラス割られたけど帰れそうな訳だし、一旦昼ごはんにしましょうや。」川瀬に促され、新宿へと戻って昼ごはんを食べることにした。


 新宿駅に戻ると、車検のおじさんがまだ居た。どうやら別の車両の車検をしていた様だ。3400系を停車させて降りると、話しかけてきた。

「お前さん、今朝車検通したばっかやろ。何でそんな整備不良なってんねや。」とても怒っている様子だった。

「えーとあの、色々ありまして・・・」

「車検証渡したやろ?一旦返せや。」

「嫌です。では。」琴音はマスコンを引いた。おじさんがスマホをすっと取り出すのを見た。

「何?整備不良の車両?私たちのことか?」川瀬は何か連絡を受けたらしい。

「なんか通報されたわ。あのじじい・・・バカめ。私はJTAの一員だぞ?これぐらいどうとでもなるわ。」川瀬はもうキャラが分からなくなっている。

「後できちんと直そうね?」琴音たちはいつ昼ごはんを食べられるのだろうか。

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