前作でタイムトラベルをしてきた吉田松陰先生が、現代を旅する物語。
一見すると奇抜な設定ですが、志の鎧を払った彼が、「偉人」としてではなく、ひとりの人間としてもう一度世界を見直していく話なのだと感じました。
山を見て、雪を見て、海へ潜り、食べて、働いて、人と出会う。
大きな志に身を焼いた人が、今度はただ生きることの忙しさや面白さに触れていく。その静かな変化が心地よかったです。
特に印象に残るのは、作者様が綴る文字から響く、松陰先生の声でした。
熱く叫ぶのではなく、低い温度で世界を見つめるような語りが、旅の情景とよく合っていました。
糸さんとの関係も、追う、縛る、というところから、最後には見送るところまで来る。
その変化も、この作品の余韻になっていると思います。
素敵な作品だと思います。
おすすめです。