本編では異世界と戦国を駆ける直史の物語が展開する一方で、この外伝は「残された側」の時間に焦点を当てている。突然姿を消した幼なじみを、ただ弓と祈りだけで追いかけようとする姫子の視点が、本編とは対照的な静かな強さを持っている。
レビューで触れられている通り、井伊谷の歴史的な場所——龍潭寺の静寂、井伊谷宮の奉射——を巡りながら、少女が一矢に想いを込めていく構成が、待つことの重さと尊さを丁寧に描いている。「もう一度、会いたいよ」という一言に集約される願いが、行動を起こせない者の無力さではなく、それでも前を向く姿勢として描かれているのが好印象だ。
本編の壮大な歴史改変の裏で、令和の日常を生きながら祈り続ける少女の物語——時空を超えて繋がろうとする想いの形に、静かな温かさを感じた。