飛行機に乗って窓から外を眺めたことはおありだろうか。雲の遥か下には恐ろしく小さな街並み。水平方向にはどこまでも続く大雲海。天頂方向には宇宙の色のような濃藍の空。そんな視界もひとたび雲へ突入すれば一瞬にして濃霧に消える。非現実的な光景が現実のものとして目の前に広がっているのだ。
あれを一度でも目にしたら、それを自分の筆に乗せて物語を書きたいと誰もが思うのではないだろうか。だが誰より強くそう思ったであろう一人、あの世界的なアニメ映画監督が山のように空飛ぶ船乗りの話を創ってしまったがために、そしてその出来があまりにも素晴らしすぎるがために、フォロワーは大変な苦労を強いられる。何しろ何書いてもラピュ◯とか紅の◯とかになっちゃうんだから。
本作はたぶんきっとそれも覚悟の上で、あえて空飛ぶ船乗りたちの物語に挑戦した野心作だ。どこまで独自の世界を描けているかは読者の判断に委ねたいが、その世界観を脇に措いてもなお、空飛ぶ船乗りたちの心情や互いの信頼が、軽妙な会話劇の中に圧倒的なリアリティで描かれている。それだけでも本作は独自の輝きを放っている。
私はすんごい映画を観たのでしょうか……⁉︎
違うか。いーや、それにしてもすっごいものを読んだ……!
読み終えて文字数を見てみてびっくりです。20000字。たった2万字。
2万字でなんという疲労感でしょう! そしてこの疲労感の、なんと心地よいことでしょう!
主人公たちは、竜の骨、皮、血を使ってできた飛行機に乗り、空の彼方「竜層」へ向かう──。
この内容(描写)に詰め込まれた緊張感、そこに湧いてくる高揚感、そしてまたそれを覆う緊張感。
もう大変です、くどいようですが「2万字」の短篇作品を読んだあとの感覚じゃないのです。
満足感は必ずしも文字数に比例するわけではないというのはここカクヨムで繰り返し学んできましたが、強烈に再確認しました。
映像はないはずなのに、それを見ているかのような没入感、臨場感。そして満足感。
この下手くそなレビューのように、「すごい作品に出会った!」としか言えなくなるような読後感をお約束いたします。
主人公たちが「竜層」へ飛び込んだ先のことについても触れたいのですが、こうも興奮したまま語ってもとっ散らかってしまうばかりですので、このあたりでおしまいにいたします。
極上のハードボイルドSF(……でいいはず!)、たっぷりどっぷり、お楽しみくださいませ。
ぜひぜひ!