「結婚する」という春香の言葉から、過去の恋に区切りをつける話なのかと思って読み進めておりました。
ですが後半で本当の過去が明かされると、二人の距離の意味がまったく違って見えてきました。
同じ出来事を通して、一方は救い、もう一方は罪として刻まれているところが、対照的で印象に残りました。
レモネードや、まだ咲いていない桜の使い方もよかったです。甘さと酸っぱさが混じった飲み物、これから咲くはずの蕾が、二人の関係そのもののように感じられました。
恋愛として始まる前に、罪悪感と感謝で形が変わってしまった関係。その切なさが静かに残ります。
最後に明かされる春香の嘘も、相手を傷つけるためではなかったのだと思うと、余計に心苦しく感じました。
強く言葉にできないまま、互いに相手の幸せを願って離れていく。
読み終えたあとに、春香のほんとうの願いが余韻としてじわっと残る作品でした。