日本の看取りシステムを支えるため、メキシコの境界都市で他人の記憶を“廃棄物”として処理するラモンの日々は、静かで、乾いていて、残酷。わずか0.00014円という対価が象徴するように、死も記憶も徹底的に消費される世界。その均質な作業を破るのが、老人の脳内に残った「_hashimoto」という名のノイズで、そこから物語は一気に人間の領域へ踏み込んでいく。漂白された日本と、暴力の空気が濃いメキシコ。その境界に流れる“残響”を拾い上げるラモンの姿が重く、しかし確かに光を孕んでいる社会派SF。