雨の日にだけ辿り着く図書館、と聞くと少し怖い場所を想像したのですが、ここで待っているのは怪異というより「自分でもうまく説明できない自分」なのかもしれません。
悩みを抱えた人に店主が差し出すのは、ありがたい人生訓ではなく一冊の文学作品。それがなんとも面白いです。本って答えを教えてくれるものだと思いがちですが、むしろ問いを増やして帰ってくることがあります。困ります。でも、たぶんそこが文学の面白さなのでしょう。
なかでも依昊ちゃんが気になりました。分かったつもりの世界と、実際に自分が感じる世界。その間で少し背伸びしている姿が、ブラックコーヒーとアップルパイのようで妙に可愛らしい。
一話ずつ違う人生を覗いているはずなのに、店主や先客、雨や本を通して、いつの間にか別の物語の気配までしてくる。不思議な本棚を眺めるように、次は誰が扉を開けるのだろう、と読み進めたくなる連作短編です。