パワードスーツに乗って、地下遺跡に巣食う機械生命体と戦う少女。
ここまでなら、格好いい戦闘物語を想像するでしょう。
ところが、その少女の心音や吐息、衣擦れの音までが、補助AIによって超高音質で世界中に配信されてしまったら――?
しかも、それが「至高のASMR」として大バズりしてしまったら!?
もう、発想からして強すぎます。
音を扱う物語は数多くありますが、パワードスーツの重厚な駆動音と、少女の柔らかな吐息や鼓動を組み合わせるとは、いったい誰が想像できるでしょう。
主人公の白華は、懸命に戦い、生き延びようとしているだけ。
ところが、本人が必死になればなるほど、その呼吸や声は世界中のリスナーを悶絶させ、配信は本人の知らないところで、とんでもない方向へ突き進んでいきます。
そんな白華を支えるのが、幼馴染の天才メカニック・凛音。
白華の音を誰にも聞かせたくない。
けれど、その配信は借金返済や機体の維持にもつながっている。
その葛藤を抱えながら、世界中のリスナーや暴走する補助AIを相手に、白華を守ろうと奮闘する凛音の「激重」な愛が、本作をさらに賑やかにしています。
凛音が必死に対策を施すほど、なぜかASMRとしての破壊力は増していく。
本人たちは真剣なのに、事態だけがますますおかしな方向へ転がっていく。
このすれ違いが可笑しくて、何度も笑ってしまいました。
けれど、本作の魅力は、この奇抜な発想を一度きりの笑いで終わらせないところにあります。
激しい戦闘音。
静かに降る雨の音。
恐怖に乱れる呼吸。
誰かを想って高鳴る心臓。
物語が進むにつれて、「音」はさまざまな表情を見せ始めます。
最初は偶然の放送事故だった白華の音が、誰かを笑顔にし、疲れた心を癒やし、ときには戦う者たちをつないでいく。
綺麗に整えられた音だけではなく、震えも、迷いも、必死に生きようとする鼓動も、その人にしか鳴らせない大切な音なのだと感じました。
そして、白華が人を惹きつけるのは、特別な声や戦闘能力だけではありません。
誰かが喜んでくれるなら、もっと頑張りたい。
大切な人が傷つけられたなら、黙ってはいられない。
自分へ厳しい言葉を向けた相手であっても、危険に陥れば迷わず手を伸ばす。
そんな白華の無自覚な優しさに、凛音だけではなく、出会う人々が次々と巻き込まれていきます。
パワードスーツ、ASMR、配信文化、幼馴染の激重な愛、そして熱いロボット戦闘。
一見すると混ざるはずのない要素が、「音」を中心に見事に重なり合った、笑えて、熱くて、どこか温かな物語です。
鋼鉄の巨人が大地を揺らし、その中心で、一人の少女の鼓動が世界へ響いていく。
白華のマイクが拾い上げる「命の音」が、どんな騒動を巻き起こし、誰の心を揺らしていくのか。
どうぞイヤホンをご用意のうえ、二人の予測不能な配信をお楽しみください。
ただし、一度聴いてしまったら……
もう普通の戦闘音には戻れないかもしれません(にやり)。