第17話「開戦──帝国軍 vs 無能の国」

 地面が震えていた。


 遠くから、重い足音が響く。


 ドン……ドン……ドン……


「……来た」


 誰かが呟く。



 視界の先。


 土煙の向こうに、隊列が現れる。


 整然とした動き。


 無駄のない配置。


 そして――数。


「……多すぎる」


 ナギの声が震える。


 ざっと見て、百を超えている。


 対するこちらは――数十。


 普通なら、勝負にならない。



「だが」


 俺は前に出た。


「ここは“普通じゃない”」



 振り返る。


 村。


 いや――要塞。


 壁、罠、導線、配置。


 すべて計算済み。



「配置につけ」


 静かに言う。


 全員が動く。


 迷いはない。



 セリスが前線。


 アリシアがその横。


 ガルドたちがラインを支える。


 ミナが後方。


 リゼが中央。


 エルナが後方支援。


 ナギが全体補助。



「……完璧だな」


 アリシアが笑う。


「ああ」


 俺も頷く。


「勝つ準備はできてる」



 帝国軍が止まる。


 先頭に立つのは――


 一人の男。


 黒い鎧。


 重圧のある気配。


「……あれ、ヤバい」


 ナギが呟く。


「分かる」


 あれは“別格”。



「――抵抗するか」


 低い声が響く。


 魔力を乗せた声。


 全体に届く。



「する」


 俺は即答した。



「……そうか」


 男が剣を抜く。



「では――」



 一瞬の静寂。



「排除する」



「来るぞ!!」


 俺が叫ぶ。



 帝国軍が一斉に動く。


 波のように押し寄せる。



「第一陣、突入!!」



 ――ドンッ!!



 だが、その瞬間。


「今だ」


 俺が呟く。



 ズドォン!!



 地面が崩れる。


 前列が一斉に落ちた。


「なっ!?」


「落とし穴か!?」



「左右から叩け!!」


 ガルドたちが動く。


 挟み撃ち。


 混乱した敵を一気に削る。



「効いてる!」


 ナギが叫ぶ。


「ああ」


 だが――


「まだ序盤だ」



「第二陣、前へ!!」


 帝国側が即座に動く。


 指揮が早い。


 さすが軍だ。



「リゼ」


「……うん」


「通路、狭めろ」



 地面が動く。


 通路が細くなる。


 敵が一度に入れない。


「進めない!?」


「くそっ、詰まるぞ!」



「今だ、前線!」


 セリスとアリシアが飛び込む。



 ――斬る。


 ――斬る。


 ――斬る。



 圧倒的。


 だが――


「……キリがない」


 アリシアが舌打ちする。


「数が多い」


「分かってる」



「だから“削る”」



「エルナ」


「……はい」


「いけるか」



 少しの沈黙。


 そして――


「……やる」



 手を広げる。


 風が集まる。


 光が舞う。



「精霊よ」



 空気が震える。



「吹き飛ばして」



 ――ゴォォォォッ!!



 暴風。


 前線ごと、敵が吹き飛ぶ。


「うわあああああ!!」



「今だ、押せ!!」


 俺の声。


 全員が動く。



 戦線が一気に押し上がる。



「……押してる」


 ナギが呟く。


「勝てる……!」



 だが――


「甘い」



 低い声。



 次の瞬間。


 圧が変わった。



 黒鎧の男。


 動いた。



 一歩。


 それだけで、空気が重くなる。



「……来る」


 セリスが構える。



「下がれ」


 俺が言う。


「こいつは別枠だ」



 男が剣を振るう。



 ズンッ!!



 地面が割れる。


 衝撃が走る。



「なっ……!?」


「一撃で……!?」



 明らかに違う。


 今までの敵と。



「……将軍クラスか」


 アリシアが低く言う。



「面白い」


 男がこちらを見る。


「ようやく“戦える”」



 視線が合う。



 ゾクリ、とした。



「……こいつは」


 ナギが震える。



「勝てるの……?」



 俺は――


 笑った。



「勝てる」



 断言する。



「だって――」



 一歩前に出る。



「全部見えてる」



 黒鎧の男が、わずかに笑った。



「面白い」



 剣を構える。



「なら――」



「来い」



 空気が凍る。



 次の瞬間。



 ――激突する。

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