超越的な力「天威(てんい)」によって人の価値が決まる世界——。
そのシビアな設定に、まず心を惹かれました。
天城家で一族が激しい後継者争いを繰り広げる中、主人公の匡一郎は「天威」が低いと見なされ、苛烈ないじめや暴力を受けます。
父親からも愛されない過酷な状況において、彼の唯一の心の支えとなったのは母親の存在。
そんな狂一郎の境遇を容赦なく描いていく序盤は重みがあり、読みながらゾクリと胸に迫るものを感じました。
匡一郎は、愛する母と妹を守るために強くなることを決意します。
彼の壮絶な境遇を知っているからこそ、そのひたむきな覚悟と姿勢に、応援したい気持ちになりました。
特に印象的だったのは、悪夢を抱えて家族を失い復讐心に燃える匡一郎がトバリを支えとしながら、新たな敵と向き合っていくところ。
抱えるものが重いからこそ支えを求め、信念を持って挑んでいく。
確かに置かれた環境は重いですが、その先には確かな希望や目的が示されています。
これほどまでに天城家の淀んだ空気を、生々しい文章で表現できる筆力には、ただただ深く感心するばかりです。
まだ拝読の途中ですが、この先どのような展開を迎えるのか気になって仕方がありません。
圧倒的な「歪み」が見事な筆致で描かれた、愛と復讐のダークファンタジーをぜひお楽しみください。