第47話  不安、緊張、高揚

「それじゃみなさん、座ってください。」


飛騨隊長の言葉をうけ、

俺たち3人は椅子に座る。

一番前の長机、その左右にそれぞれが座る形だ。


「少し前から予定していました模擬戦。

今回は、実践形式で行ってもらいます。

・・・・・・・っと、そういえば自己紹介まだですよね?」

「うっす。」


飛騨隊長の言葉に例のリーゼント男が反応する。


「それでは先輩である柏木さんから、所属部隊と名前をお願いします。」

「は〜い。

1番隊所属の柏木ツバメです。

よろしくね〜。」


そう挨拶したのは、

おおらかそうな女の人。

可愛らしい顔立ちで、髪型はセミロング。

(で・・・・でか・・・・。)

何とはいうまい。

少し紳士になろう。

そう思った。


「俺の名は井伊原拓海。ウィザードだ。

所属は2番隊。よろしく。」


急に立ち上がり、ポーズを決める。

あえて説明はしたくない。

が、何かを拗らせていそうなのはわかる。

雰囲気通りの見た目である。


次は例の奴だ。


「俺は3番隊特攻隊長。神谷龍司だ。」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


すごいみてくる。

睨む、ではない。

明らかにこちらを見つめている。

少し変な威圧は感じるが・・・。

変な空気がその場を包む。


「・・・・・・以上。」


神谷隊員がそういうと、席に座った。


「ありがとうございます。

それでは、新隊員の皆さん。自己紹介をお願いします。

所属隊は、正式には決まっていませんので、得意なことや好きなことでも。

オリジンは、今は秘密にしておきましょう。」

「はい。」


そういって哲が初めに自己紹介をしてくれるようだ。


「僕は宮城哲といいます。パソコン系が得意です。

よろしくお願いします。」

「よろしくね〜。」


軽く紹介を終えると、柏木隊員が相槌をうつ。

続いて朔の番だ。


「私は新田朔です!歌、得意です!

よろしくお願いします!」

「ほわ〜!本物だ・・・。」


包帯の井伊原隊員は、

先ほどの態度が嘘のように剥がれ、純粋に目が輝いている。

ファンなのか・・・?


そして最後。

俺の番である。

朔が座った瞬間、場が静まり返る。

変な雰囲気だ。

俺の地震を演出しているようだった。


「粟生屋愁・・・・・・・。」

(まずい、何も考えてねえ。)

(『おい相棒。恋愛漫画好きですって答えとけよ』)

(・・・・俺を社会的に殺す気か?)


流石に女の子が好きそうなジャンルの漫画を好きだとはその場でいえない。

恥ずかしさが圧倒的に表に出るので、絶対なしである。


「・・・・・・・。

人をビビらせるのが得意・・・・です。」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


終わった。

自分のコンプレックスを得意なことのように言っちまった。

”口から出た言葉は取り返しがつかない。”

恋愛漫画から学んだ言葉である。


「・・・・ハハ!粟生屋、お前気に入ったぞ。」

「え?」


口を開いたのは神谷隊員。

あの特攻服をプレゼントとして用意していた奴だった。


「やっぱり俺の目に狂いはなかった。」

「始まったよ。こうなると止められないよな龍司は。」

「ま〜いいじゃない。嬉しそうだし。」


ギラギラとしてる目に見つめられ、少しばかりの不安がよぎる。


「なあ愁。なんかあったん?」

「僕も気になった。」

「いや、小型艦にあいつの名前が入ったメッセージと一緒に特攻服が入ってたんだ。

プレゼントだって。」

「うわ〜。」

「・・・・。」

「嫌な予感したんだよな・・・。」


頭を抱える。

ややこしい人に目をつけられたようだ。


「皆さん!自己紹介終わりましたね。

それでは模擬戦の詳細を話します。」


そう言って電気を消す。

早速飛騨隊長が説明に入るようだ。


「今回は実践形式の模擬戦です。

いち早く皆さんに慣れてもらえるよう、

他の隊員も同じ模擬戦をしています。

場所はアマテラスの外側、宇宙空間です。」

「面白くなってきやがった・・・。」


(もうやめてくれ・・・。)

(『楽しくなってきたじゃねえか相棒!』)

(お前まじ俺と代われよ・・・。)


嫌な笑顔をこちらに向けてくる神谷隊員。

よほど楽しみなのだろう。

そんな態度を向けられたのは初めてで、かなりきつい。

対応に困っている。


「勝敗については、各皆さんの胸部分にバッジをつけてもらいます。

取られた人はその場で防衛基地に自動的に戻されます。

1人抜けたら数的不利になりますので、油断しないように。

それでは実際に装備などをみてから確かめましょう。」


中層の会議室から移動し、

上層の準備室へと向かう。


戦闘用の服は映像越しにはみたことあったが、

実際に身につけるのは初めてだった。

映像で見る限り、訓練用の服とは全くの別物である。


少しして戦闘準備室に到着。


「ここが実際に使用する準備室です。

まず、戦闘服の下に着用するスーツに着替えます。

イメージ、ウエットスーツのようなものです。

首から全身を包むスーツですね。

それでは着替えてください。」


そう言われて男女、それぞれの更衣室へと移動。

サイズはフリーのようで、

手に取った時は本当に大丈夫なのか?と思うほどにブカブカである。


「着方わかるか?」


リーゼントさんが話しかけてきた。


「いや、わからん。」

「クク・・おもしれえ。生意気な奴だな。」

「・・・・・・・・」

「俺にタメ口聞ける年下なんてそういねえぜ。」


もう嫌かもしれない。

敬語、勉強するべきだった・・・。

何クソ精神どこへ行ったのやら。

反発する気が起きない。

あいつらに教わろう・・・。


そう思いながら着方を教わる。

不思議な服で、かなりサイズが大きく、

ヘソから首上までが前後ろで真ん中から半分に分かれている。

切るのは簡単そうだが、ブカブカな状態でどうするのかと思っていると。


神谷先輩が服の首元の部分を自分の首に会うようにくっつける。

すると前後ろの別れていた部分が自動的に合わさった。

どこで合わさっていたのかわからないくらいに綺麗に。


そして、左胸部分にある防衛基地アマテラスのロゴを押すと、

ブカブカだったスーツが体にピッタリと密着する。

同じように自分も試してみると、同じく成功した。


哲も同じく問題ないようで、準備が完了する。


出てくると、朔も終わっているようで、待っていた。

体のラインがしっかり出ている。

哲も同じく逸らす。

2人して柏木先輩と見比べるように視線移動をしてしまった。

柏木先輩は威力が高すぎた。

その反応に朔は。


「お前ら・・・・あとで覚えとけよ?」


目が笑っていない。

密かに青筋が見える。

2人して終わったと思った瞬間であった。


「それでは次にこちらに入って通り抜けましょう。」


進むと、左右上にシャワー口がいくつも設置された通路。

入り口に操作盤があり、飛騨隊長が触ると扉が開く。


「さて、中に入りましょう。」


ついていくと、全員が入った後に扉が閉まり、

全てのシャワー口から霧が吹き出す。


「な、なんだ!?」

「これは宇宙空間で紫外線から守るための、

いわば、日焼け止めの上位互換だと思ってもらえれば大丈夫です。

普段通りに立ってもらえれば大丈夫ですよ。

じき終わりますので。」


程なくして、噴射が止まり、奥の扉が開く。


「こちらです。」


進んでいくと、今度は映像で見たことのある戦闘服がかけられていた。


「ここでは皆さん専用の戦闘服があります。

各々のロッカーに入っているはずなので探してみてください。

見つけられたら、手のひらを画面に認証させると開くはずですよ。」


結構な数のロッカーがあるようで、その中から探していく。


「朔、愁。見つけたよ。」


哲がいち早く見つけてくれたようだ。

俺たちのロッカーの位置が近いようで、

それぞれのロッカーのスクリーンに名前が表示されていた。


手のひらを当てると、スキャンが開始される。

完了したのか、緑色に光り、ロックが解除した音がする。


開けると、戦闘服とブーツが入っており、それぞれ取り出す。

着方は普段の服と変わらず、ズボンを着用し、上着を着る。

上着はチャックがない長袖で、下からスッポリ上半身を入れる。

首元の部分がかなり上まで来ており、

鼻上までを隠すようなデザインとなっていた。

さらに、服と顔の境界線をしっかり密閉しており、飛騨隊長に聞くと、

「宇宙で呼吸するためです。」とのことだ。


着替え終わり、ブーツを履く。

紐は自動でちょうど良く締めてくれるようで、手間が要らず楽だった。


黒を貴重とした戦闘服。

胸左上部分に防衛基地アマテラスのロゴが煌びやかに光っている。

動きにくいかと思いきや、全体的に動かしやすい。

顔の半分がスーツと一体化してるので、首が動かしにくいのかと思いきや、そうでもない。

ただ、密着している部分に少し違和感があるが・・・。


「哲、愁。どう?」


朔が戦闘服を着て、全身を見せてくる。

目と眉毛だけが出ているようなデザインとなっているが、

スタイルがいいのか、完璧に着こなしていた。


「いいんじゃない?」

「ああ、ちゃんと着れてんじゃね?」

「はぁ。自分らほんま女心わかってへんわ。」


そう言って朔は柏木先輩の方へと戻っていく。

残された男2人は・・・。


「・・・・不味かったか?」

「いや、どうだろう・・・。」


2人してお互いの顔を合わせるなり、

頭の上に?が浮かぶような表情をする。


「皆さん、準備できたようですね。

それではこの先にあるハッチに向かいます。

いよいよ宇宙空間です。

油断しないようにしてください。

何かあっても確実に対処できるように防御壁、

戦闘範囲の指定もしておりますので、問題ないと思います。

こちらへどうぞ。」


そう言って飛騨隊長についていくが、

いつの間にか隊長も戦闘服を纏っていた。

熟練者。

流石である。


そして、通路に入ると準備室の扉が閉まる。

正面には映像でしかみたことのないハッチと、

昇降する床だけのエレベーター。

その上に乗る。


『防衛隊、隊員確認。

飛騨隊長の認証、受諾。

新人育成のための模擬戦。

宇宙空間の模擬戦範囲を固定。

10km直径の球体をベースに範囲を設定。

出撃隊員の装備品、スキャン。

オールクリア。

身体状態、ともに正常。

ハッチ、開けます。』


アナウンスが響く。

これから宇宙空間に入る。

緊張よりワクワクが勝っている自分がいる。


ハッチが徐々に開き、宇宙が見える。

そこは煌びやかな星々が照らす、輝かしい光景。

吸い込まれそうな程の大量の星々。


『ハッチ、正常に動作確認。

これより、エレベーターを起動します。』


エレベーターが起動した。

徐々にのぼる床。

登るごとに上がるワクワク感。


『愁くん。頑張ってね。』

「え?」


突然耳につけた通信装置から声がする。

聞いたことある声に驚き、声の主を思い出す。


「オペレーターの・・・。」

『木崎香里よ。私のこともう忘れたの?

お姉さん悲しくなっちゃうわ・・・。』

「す、すいません。」

『あら、敬語使えるようになったじゃない。

成長したのね。また顔出しなさいよ。』

「お、おう。」

『頑張ってね。なんかあったら私がサポートするから。』

「あざす。」

『よし!行ってこい!』


久々に会話をした感じがする。

初めて防衛基地でみた3番隊の防衛戦。

3番隊のオペレーターをと止めているお姉さん。

その人だった。


改めて声をかけてもらえたこともあり、

背中を押された気分になる。

ワクワク感は吹き飛び、目の前の模擬戦に集中するいいきっかけとなった。


「それでは皆さん、バッジを胸に。」


戦闘服の上からバッジをつけようとすると、

胸の部分に戦闘服と密着せず、バッジが浮いていた。


「取られたら脱落。

こちらに強制的に戻されます。

覚えておいてください。」

「はい!」


皆が返事をする。


「初宇宙空間の皆さん。

宇宙空間でも地球同様に動けるよう、

各防衛基地の技術が詰まっています。

ブーツは空間の気体を取り込み、噴射することで自由に飛び回ることができます。

それに加え、足の動きに応じて地球の地面と同じような反発も生み出してくれますので、

自由に動けるはずです。

地球と違うのは、空間全体が地面になるということです。

360度、いわゆる空を飛びながら戦闘することになります。

こればかりはすいません。慣れてください。」


どう動けばいいのかわからなかったので、

説明を真剣に頭にいれる。

地球と同じように動けるのであれば、

慣れれば戦闘の幅が広がりそうだと感じた。


「それでは皆さん。

中心部分に浮いているオービットへ移動してください!」


3人で顔を見合わせる。

朔は不安なのか、へっぴり腰になっている。。

哲もどうしていいのかわからずにいたので、

俺が先に前に出ることにする。


「俺が先に行くからな。」

「わ、わかった。」

「ほ、ほんまに大丈夫やんな・・?」

「大丈夫だろ。」


そのやりとりを先輩たち、飛騨隊長が密かにみていた。

皆、懐かしむような表情で微笑ましくみている。

その一方、神谷先輩はウズウズしてしょうがないようだ。

笑みが溢れて非常に怖い。

愁たちがみていなかったのが幸いだった程に。


そして愁は昇降エレベーターの床を蹴り、宇宙に身を投げる。

試したかった、オーラを足に纏い、地球と同じように走る。


足に伝わる感覚は地球と同じで、

足を動かすたびに宇宙を駆けているようだった。


ただ、地面のない場所を蹴る必要があるので、

上半身のバランスが難しく、慣れるまで少し時間がかかりそうだと感じる。


「哲、行くで。」

「そうだな。」


2人して愁に向かって走る。

足の動きにうまく反応しているので、

難なく目的地には来ることができた。


「これ、ちょっとむずいな・・・。」

「慣れるまで時間がかかりそうだ。」

「動いて慣れるしかねえよ。」


そして飛騨隊長が気づけばすぐそこまで来ていた。


「粟生屋さんのいう通りです。

いわゆる、動き方は、習うより慣れろってやつですね。

この模擬戦でいやという程、慣れると思いますよ。」

「隊長〜、準備できましたよ〜。」

「わかりました。

それでは皆さん。模擬戦、訓練を始めます。」


飛騨隊長が少し後ろへ下がる。


「そうです。

言い忘れていましたが、それぞれのチームで通信がつながっているはずです。

はじめなので難しいとは思いますが、連携をとりながら、

情報交換をしながらやってみてください。

それでは・・・”アマテラスの光あれ”。

3、2、1、スタート!!」

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