「たとえば、こんな現代」

 「例えばこんな未来」っていう小説があった気がする。










スマホが普及した現代でも、黒電話は現役なのだそうです。

だから、こんなこともあります。



田舎のおばあさんにスマホで電話する孫。


「RRRRRRR……

 あ、ばあちゃん、オレオレ、って。

 詐欺じゃないよ、鞍之輔(くらのすけ)」


「ああ、蔵乃介(くらのすけ)ちゃんかい。

 元気にしてるかい。

 東京は慣れたかい?」


「うん、もう大丈夫。

 ばあちゃん、りんご、ありがとう。

 でも多すぎて腐らせちゃうから、サークルのみんなに配ったよ」


「そうかい、さあくる?

 なんだい、それは。

 わかんないけど、友だちがいっぱいできたんだね。

 よかったよ」


「りんご、おいしかったって。

 写真、送ろうか?」


「声だけで十分だよ。

 うれしいねえ、足りなかったら、また送ろうか?」


「嬉しいけど、今年はもういいよ。」


「そうかい、お世話になった方にも配ったかい?」


「教わってる教授と学生課の事務員さんにも、みんなに渡した」


「昔から気の利くいい子だったものねえ」


「よしてよ。むず痒い。

 あ、もしこっちに来るなら、教えて、案内するよ」


「ありがたいけど、丸1日も電車に揺られるのは年寄りには堪えるよ。」


「……? 何言ってるの。

 新幹線で3時間だよ」


「新幹線って、東京だけじゃなくて大阪万博まで案内してくれるつもりなのかい」


「何言ってるの、大阪万博なんて去年終わったじゃない。

 それに東京、大阪間は2時間半だよ。

 あ、もうバイト行く時間だから、切るね」


「頑張っておいでよ。」


 通話が終わり、田舎のおばあさんは黒電話を置いた。


「慌ただしい子だよ」


「ああは言ったけど、

 建ったばかりの霞ヶ関ビルディングとか、見てみたいもんだね。

 摩天楼ってえ言うの?

 大阪万博もさ、

 ワイヤレステレホンとかいうの、持ち運べる電話だってね。

 生きてる間に見てみたいもんだ」


「でも、初めて宅急便ってのを、

 昨日お願いしたけど、もうみんなに配れてるんだね。

 これからは宅急便だね。郵便局より断然早いもの」









≪作者注≫


 2020年代で暮らす玄孫(やじゃご)と

 1970年代で暮らす高祖母が会話できてしまう世界って素晴らしいですね。


 黒電話ばあちゃんの孫が蔵乃介(くらのすけ)、

 蔵乃介(くらのすけ)の孫が鞍之輔(くらのすけ)。

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