AIの中では何が起きているのか。
その仕組みを、まるで一人の人物が理由も分からず山を降り続ける物語として描いているところが、とても面白いSF掌編でした。
目が見えないまま、足裏の感覚だけを頼りに進む。
落ちて、戻って、また進む。
同じ失敗を少しずつ避けるようになり、それでも終わりの見えない道を歩き続ける。
その繰り返しが、単なる説明ではなく、ひとつの体験として伝わってくるところが魅力的でした。
特に印象に残ったのは、本人が自分の目的を理解していないまま、それでも少しずつ良い方向へ進んでいくところです。
ただ続けているだけ。
けれど、その姿がなぜか少し切なくて、AIの話でありながら、人間の姿にも重なって見えました。
私たちも、いつも正解や目的を完全に理解して進んでいるわけではなく、失敗して、少し戻って、また別の道を探しているのかもしれません。
知的な面白さがありながら、最後に少し不思議な寂しさも残る作品でした。