夫の裏切りで結婚生活を失ったピアニスト、エリカが、戦争の傷跡を残す魔法王国ドールへ渡るところから物語は始まる。明るくたくましいエリカと、国を背負って生きる夏至王アダン。身分も立場も違う2人が、ピアノを通して少しずつ心を近づけていく過程がとても丁寧に描かれている。
特に印象に残ったのは、王女へのピアノ教授を終えたエリカに、アダンがその功労を認め、王宮のピアノそのものを贈る場面だ。ただ高価な品を与えたのではなく、彼女の努力と音楽家としての誇りを王が正式に認めた贈り物になっているところが素敵だ。
宮廷の思惑や王妃との緊張にはハラハラさせられる一方、エリカの陽気さや周囲の人物たちとの掛け合いには何度も笑わされる。恋愛だけでなく、戦後の国で音楽が人々の心を癒やしていく物語でもあり、題名の『王さまのピアノ』が読み終えたあとにいっそう温かく感じられる。
追伸
何時もだと10話を読み終えてからレビューを描くのですが、とうとう最終回になってしまいました。・みすみ・さんの作品は読みやすく、読み終わりが明るいですね。途中のポイントポイントも覚えていたので描きやすかったです。ピアノの鍵は感動ものですが、後半の老婆も良かった。アレクサンドロス大王の宿敵スピタメネスの妻ザーラの老後の姿を思わせる哀れさでした。
タイトル。
それは、作り手の思い入れがある。
シンディ・ローパーをご存知だろうか?
歌うと、口の形が真四角になる、ハデなオバサンである▢🎤♬
彼女の曲が日本でリリースされた際、曲のタイトルに邦題がつけられた。
原題
『Girls just want to have fun』
邦題
『ハイスクールはダンステリア』
······。
シンディはキレた。
ガチギレである💢
そして、タイトルは変更された。
このお作品のタイトル。
『王さまのピアノ』
このお作品が、海外に進出したとき、センスの無いヘンテコリンなタイトルにされたら、
ミスミテンテン様は、ガチギレるであろう。
それくらい、このお作品は、このタイトルが合っている。
本当に、このタイトル以外は考えられない。
異世界魔法世界で、一切魔法能力の無い凄腕のピアニスト、エリカ=トラヴァーズ。
夫の一方的な浮気により、離婚した彼女。魔物たちとの大戦を終え、戦後復興に沸く魔法王国ドールへ芸術支援のため訪れる。
そこで出会った、ドール王国国王、アダン=ドールこと夏至王。彼との出会いから、波乱の物語が始まる。
とっても、キレイでハピエンなタイトル回収。
ぜひぜひ、お読みになって、体感してください。
読後にきっと思います。
このタイトル以外、あり得ないと。
音楽とは
ただ、音楽であり、人生だった──
その一節どおり
鍵盤からこぼれる音が
傷ついた心と国を静かに結び直してゆく
ひとつの別れを越えて
異国へ渡ったピアニストは
朗らかで豪胆
それでいて──
他者の悲しみに驚くほど繊細だ
魔物
信仰
王家の思惑
華やかな幻想世界の奥には
戦禍の疼きが残るが
軽妙な笑いが
物語に温かな呼吸を与えてくれる
また──即興演奏の場面が美しい
名も知らぬ人々の胸へ
同じ旋律が忍び込み
それぞれの記憶を震わせる描写には
音の見えない光まで感じられるほど
痛みを知る者の演奏は
慰めにとどまらず
生き直すための灯となる──
最後の一音が消えたあとも
その余韻は胸の奥で鳴り続けている