音楽とは
ただ、音楽であり、人生だった──
その一節どおり
鍵盤からこぼれる音が
傷ついた心と国を静かに結び直してゆく
ひとつの別れを越えて
異国へ渡ったピアニストは
朗らかで豪胆
それでいて──
他者の悲しみに驚くほど繊細だ
魔物
信仰
王家の思惑
華やかな幻想世界の奥には
戦禍の疼きが残るが
軽妙な笑いが
物語に温かな呼吸を与えてくれる
また──即興演奏の場面が美しい
名も知らぬ人々の胸へ
同じ旋律が忍び込み
それぞれの記憶を震わせる描写には
音の見えない光まで感じられるほど
痛みを知る者の演奏は
慰めにとどまらず
生き直すための灯となる──
最後の一音が消えたあとも
その余韻は胸の奥で鳴り続けている