第六話【自由になる権利】
アルンはメリューをおぶって服屋までの道を歩いていた。
周りからの視線は痛い。だがそんな事は関係なかった。
アルンはメリューをおぶる際、主命令とは言ったが、本心では全く命令している気はなかった。
ただ彼女がどうやったら無理をしないでいてくれるかの最善選択で主命令と言っただけだ。
本来は自己強化遠征と闇市の調査が目的だったが彼女を買ってしまった以上自己強化遠征の方はもう続行が不可能、今後はメリューに衣食住を与えて、最終的には奴隷という身分から解放し、一般人に戻す。
それが今のアルンの目的だった。
(服屋はコイツを受け入れてくれるだろうか。散髪屋みたいに断られたらどうするか念の為考えておかねぇとな。それと今回の件、総軍隊長にも報告しないと後が面倒だ。)
様々な事を脳内に巡らせながら歩いていると服屋に到着した。
「よし、着いたぞ。降りれるか?」
「は、はい。ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ございません。」
アルンはしゃがみこみ、メリューを背中から下ろす。
メリューは慎重に地面に足をつけた。
だが次の瞬間だった。
「おいお前、噂は届いてるぞ。…ったく、遂にうちにも来やがったか…。面倒くさい。」
服屋の店主の男が難癖をつけながら店の扉の前に立っていた。
やはり店内に入らせたくないのだろう。
店主はその場から一切動かず高圧的な態度で続けた。
「お前まさか、うちの店にその奴隷を入れるために来たんじゃないだろうな?」
アルンはその態度に悶々としながらも冷静を保ち、店主にこう返す。
「ああ、そうだ。この子に服を三着ほど売って欲しい。」
だがアルンの願いは虚しくも店主の次の言葉で断ち切られてしまう。
「奴隷に売る服はない。帰ってくれ。」
この言葉でアルンは遂に限界を迎えた。
店主前に出て必死にこう言い放った。
「…っなんでだ、なんで、コイツだって生きてる。しっかり心臓は動いてる。…なのにっ、なんで!どうしてコイツを、メリューを物みたいに見るんだ!!俺やお前らみたいな生きてるやつと同じはずじゃないのか?!自由になる権利があるんじゃないのか?!」
店主にその言葉は響かない。
周囲に歩いている者、誰もが無視を貫き、視線を逸らす。
そして遂に店主は耐えきれず、アルンの言葉を遮り怒鳴った。
「うるさい!お前はもう出禁だ、帰れ!」
そういうと店主は店の中に入り散髪屋の夫婦と同じように扉に鍵をかけてしまった。
「申し訳ございません。私がいるせいでこんなことに…。」
「…平気だ。拒絶されるのは慣れてる。とりあえず行くぞ。この店はもう出禁になった以上近づけない。」
アルンはメリューの腕を引き、歩き出す。
メリューの前髪は伸びきり前が見えなかったが、前髪の隙間から少しだけ見えた背中はどこか悲しげな雰囲気を漂わせていた。
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