とても優しくて素敵なお話でした。それが初読の感想で、何度か繰り返し読んだ今も、その想いは変わりません。一方で、この物語に引かれた善性に光を当てるほど、男の心が離れていくような、そんな喪失感を味わいました。なにかが決定的に欠けてしまっている。そんな風に思わずにはいられません。象徴となる花筏はその欠けを覆い隠しているように(私には)見えました。でもその光景を見て、最後に彼は捨てるはずだったものを持って帰るんですよね。そこに見える光はやっぱり信じたいなと、一読者としてそんなことを想いました。感情を大きく揺さぶる素晴らしい一作でした。