レモネードの水面がふっとハモる。その瞬間から、日常が軽やかにひっくり返ります。入れ替わった先で出会う「地上の天使」ナナちゃんに、読んでいるこちらもうっかり目尻が下がりました。ところが、その可憐さの裏に隠された顔が、思わず声を上げたくなるほど鮮烈です。
文章表現もお見事です。氷の溶けるグラス、蕾をふくらませていく桜の老木。さりげない情景が、時間の流れと心の揺れを静かに映します。軽快な会話のテンポの中に、親の戸惑いや、子どもを思う気持ちがにじむのも魅力でした。笑いながら読み進めるうち、「家族って、いちばん分からなくて、いちばん愛おしい」と、ふと胸が温まります。
★こういう人にオススメ
入れ替わりや不思議な設定の、軽妙なコメディが好きな人
親子や家族のすれ違いを、笑いながら味わいたい人
桜やレモネードなど、季節感のある情景描写が好きな人
読後にくすっと笑えて、少し温かくなる短編を探している人
今回の筆致企画の中で、「嘘」がいちばん好きな作品です、個人的に、あくまで個人的に!
入れ替わりものとして面白いだけでなく、互いの人生を少し羨んでいた二人が、実際にその生活の中へ入ってみたことで、見えていなかった大変さまで引き受けることになる。
そのうえで「やっぱり――」となる流れに、とても納得感がありました。
「地上の天使・ナナ」――さてさて。どうでしょうか。
展開にリアリティがありますので、詳しくは実際にお読みいただきたく!
レモネードも、ただの不思議な装置ではなく、二人の関係をつないでいるものとして最後まで生きていました。
軽やかに読めるのに、「他人の人生は外から見ただけでは分からない」という、どこか教訓めいた作品でした。