最適化された社会に抗う物語ですが、
この作品で特に面白いと思ったのは、
人間らしさが思想だけではなく、身体の感覚として残っていくところです。
ストッキングの伝線
冷めたコーヒー
指先の震え
紙のざらつき
理由の説明できない熱
AIから見れば、どれもノイズや無価値な情報に過ぎない。
それでも百年以上前の光莉が残した小さなずれが、
未来のEや田中たちの指先に、確かな感触として届いていく。
特に印象に残ったのは、
光莉が出会った少年の震えです。
誰もが穏やかに笑う完璧な村の中で、
ほんのわずかな指先の震えだけが、
その人がまだ自分の内側に何かを持っている証になる。
そして、その震えさえ最適化によって失われてしまう。
大きな革命ではなく、
誰にも気づかれない一本の伝線や、
何でもない会話や、
説明できない違和感を残すことが抵抗になる。
人間らしさとは何だろうと、
静かに考えさせられるSFでした。
この先、0612と0712が未来でどう繋がっていくのか楽しみです。