仕事も家事も嫌い。
人生もうまくいかない。
そんな主人公・衣莉が迷い込んだのは、現実と異世界の狭間にある小さな占い館でした。
そこで始まるのは、本格的な魔法や壮大な冒険ではありません。
鏡から掃除機を取り出したり、お婆ちゃんと掛け合いをしたり、自分の占い館を始めるために動き出したりする、少し不思議な毎日です。
けれど、この作品の面白さは、その何気ない空気の中にあります。
本人は「適当に占ってしまった」と焦っているのに、その言葉が誰かの心を救ってしまう。
占いは未来を決めるものではなく、人が前へ進むきっかけになるものなのだと、物語を通して自然と感じさせてくれました。
毒舌で飾らない主人公の語りと、おっとりしながら核心を突くお婆ちゃんとの掛け合いも心地よく、笑いながら読み進めるうちに、この少し不思議な世界が好きになっていきます。
「異世界で夢を叶える」という王道とは少し違う、新しい一歩を優しく応援してくれる物語です。
心や体が疲れた日に、笑って少し元気になりたい方へおすすめしたい、優しい異世界譚です。