20 乱入者
「悠さん!」
発声者はスーツを着た、背の高い青年だった。年齢は二十歳前後の大学生くらいだろうか。若々しい爽やかな印象が先行するが、スーツに着られているという雰囲気はなく実に板についている。普段からフォーマルな格好をし慣れていると推測できた。
「
東雲さんは青年に驚いていたが、やがて俯いてしまい言葉は墜落した。
「仕事が予定より早く終わったから待ち合わせ場所で待ってたんだ。公園の入り口が指定だったでしょ。そしたら警官と話している君がいて、トラブルにあったんじゃないかなと心配になったから」
「……何でもないです」
東雲さんはベンチから立ち上がると青年の方向に足を向けた。
「ごめんなさい巡査。もう行かなきゃ」
その声は名残惜しそうだった。
「ちょっと待って」
東雲さんを保護……とまではいかないが気にかけている身としては、突然現れた正体不明の男性に彼女を預けるわけにはいかない。警察官として相手の素性を知る必要があった。
それに先ほどまであった彼女の笑顔が鳴りを潜めたのも、
「一体どういったご関係で?」
「僕は——」
「この人は」
しかし青年よりも先に答えたのは、あろうことか東雲さんだった。
「この人は、私の彼氏」
「か、彼氏……?」
「そう」
彼氏とはつまり恋愛的なパートナー、ということか。
困惑する私に説明する必要があると感じた青年は、一歩前に出て口を開いた。
「申し遅れました。僕は西蓮寺と申します。東雲悠さんとは結婚のお約束、つまり婚約している立場となります。事態を把握しきれておらず恐れ入りますが、悠さんが警察にお世話になる事態があったのでしょうか?」
西蓮寺さんはお辞儀を交えつつ、極めて丁寧に接してくれた。
「婚約……なるほど、そういったご関係でしたか……」
婚約か、東雲さんは社長令嬢だから婚約者がいたっておかしくない。それに前に
この人については理解できた。
しかし今までの東雲さんの話と照らし合わせると、疑問はとめどなかった。
「悠さんが事件に巻き込まれたりとかは……」
「いえ、そういったことは一切ないのでご安心を。東雲さんはいつも——」
「落とし物を見つけたので届けたんです。ただ、それだけです」
東雲さんの横槍は有無を言わせない勢いだった。
「それでは巡査。失礼します」
いつもとは全く異なる雰囲気で東雲さんは去っていく。それは親密になる以前に逆戻りしたような感じだった。
「それでは僕も失礼いたします。もし今後悠さんのことで何かありましたら、僕のほうで対応いたしますのでご連絡はこちらに」
西蓮寺さんは慣れた手つきで名刺を差し出す。名刺を受け取ると紙面には「西蓮寺コーポレーション
「それでは」
「どうも」
彼は先に去った東雲さんを追いかけていった。
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